【UX LIBRARY】UIとUXの違いとは? 「UI/UX」という表記が生む誤解
※「UX LIBRARY」は、ビービットがこれまで発信してきたUXに関する知見・情報を厳選し、コンパクトに再編集してお届けするシリーズです。
1分で分かるこの記事のポイント
今回お届けするのは、レポート「経営者が知るべき『UI/UX』の誤解」の第1章、「UX×ビジネスを専門とするビービットが『UI/UX』と言わない理由」です。
この記事には以下の内容が含まれます。
1.「UX」は「エンドユーザと企業・サービス・製品とのインタラクションの全側面」と定義され、「UI」よりも広い範囲をカバーしている
2.「UI/UX」という表記は、以下2つの誤解を招く恐れがある
a.「使いやすさの改善」や「画面デザイン」がUX業務の中心だと思ってしまう
b.UXを「単一接点における特定の瞬間の体験」としてしか考えられなくなってしまう
3.2つの誤解のせいで、UX活動をUIデザインや単一接点の改善のみに留めてしまった結果、ユーザが求める体験と企業が提供する価値とのギャップを埋められず、成果が上がらないことがある
イントロダクション:なぜ「UI/UX」という表記が問題なのか
デジタル接点・サービスの新規開発やリニューアル、そして日常的な改善では、しばしばある大きな問題が発生します。その問題とは、「UIのデザイン・改善ができるプレイヤーはいても、理想的なUXの検討や機能の開発ができるプレイヤーが、社内にも社外にもいない」というものです。その結果、見栄えは良いのにユーザに必要とされない接点・サービスが生まれてしまっています。
こうした問題の原因は、往々にして「UX」という言葉に関する認識のズレにあります。実はこの認識のズレは、誰もが当たり前に使っている「UI/UX」という言葉によって引き起こされているケースがあるのです。
この記事では、「経営者が知るべき『UI/UX』の誤解」の第1章を再編集してお届けすることで、「UI/UX」という言葉が引き起こしうる、UXを巡る誤解・トラブルをご説明します。
それでは、「経営者が知るべき『UI/UX』の誤解」の第1章をお楽しみください。
「UI/UX」という表記が招く2つの誤解とは何か
「UI/UX」という表記が招きうる代表的な誤解として、以下の2点を挙げることができる。
1.「使いやすさの改善」や「画面デザイン」がUX業務の中心だと思ってしまう
2. UXを「単一接点における特定の瞬間の体験」としてしか考えられなくなってしまう
以下ではそれぞれの誤解の詳細と、その誤解がビジネス成果にどのように影響するかを詳しく解説する。
第1の誤解:「使いやすさの改善」や「画面デザイン」がUX業務の中心だと思ってしまう
UXの重要性が広く認められている昨今、「UI/UXデザイン部」に類する名前で、ウェブサイトやアプリケーションの画面デザインを担当する部署を新設する企業が増えている。
このような動きは、「『使いやすさの改善』や『画面デザイン』がUX業務の中心だ」という暗黙の前提に基づく、UIデザイン偏重型の組織編成・企業活動である場合が多い。「UIとUXは別物であり、前者は後者の一要素に過ぎない」と担当部門が理解していても、組織を設計する経営側の認識違いによって、このような状況がしばしば発生してしまう。
UX概念を提唱したドナルド・ノーマン氏と、ユーザビリティの第一人者とされるヤコブ・ニールセン氏が共同設立したUXコンサルティング企業「ニールセン・ノーマングループ」では、UXを次のように定義している。
ニールセン・ノーマングループにおけるUXの定義
「ユーザエクスペリエンス」は、エンドユーザと企業・サービス・製品とのインタラクションの全側面を包括している。
典型的なユーザエクスペリエンスの第一要件は、顧客のニーズを正確に満たし、煩わしさや面倒ごとを感じさせないことだ。次に、所有する喜び、利用する喜びを感じられる製品を生み出すシンプルさとエレガントさが求められる。真のユーザエクスペリエンスは、顧客が「欲しい」と言っているものを与えたり、チェックリストの機能を提供することを遥かに超えている。企業が提供商品で高品質なユーザエクスペリエンスを実現するには、エンジニアリング・マーケティング・グラフィックデザイン・インダストリアルデザイン・インターフェイスデザインなど、複数の分野のサービスをシームレスに統合しなければならない。
この定義は、「UX」という言葉が指す領域を大づかみに理解するために役立つ。ここでのポイントを整理すると以下のようになる。
● ユーザのニーズを正確に満たすこと
● ユーザに煩わしさや面倒ごとを感じさせないこと
● 所有する喜び、利用する喜びを感じられる製品を生み出すこと
このうち、1つ目の「ユーザのニーズを正確に満たすこと」は、2つ目と3つ目の要素の前提条件になっている。そもそもユーザのニーズを満たしていない製品・サービスは、利用時にこれといった違和感がなかったとしても使い続けてもらえず、そのため所有や利用による喜びを感じさせることもできない。どれほど洗練された人気のスポーツカーであっても、「大勢の友人たちと大量の荷物を運んで山奥のキャンプ場へ行きたい」というニーズには向かないはずだ。車体の色やエンブレムをどれほど改善しても、ニーズとのギャップを埋めることはできない。
つまり、UIデザインの工程では、使いやすさの改善やビジュアルの調整はできても、ユーザのニーズと提供価値のギャップまでは埋められない。ユーザのニーズを適切に捉え、それに合致する価値を製品・サービスが持っていることを前提として初めて、それをより分かりやすく伝えたり、より美しく見せたりするプロセスとしてのUIデザインが効果を発揮できる。
この点に気づかずUIデザインのみに注力していると、「見栄えは整っており、利用時にこれといった不便も感じないが、ユーザに必要とされず、それゆえビジネス成果にも貢献しない製品・サービス」が生まれてしまいかねない。むしろ、製品・サービスの提供価値が適切かどうかを繰り返し問い続け、変化し続ける市場に合わせてコンセプトを更新していくことこそが、UX業務において最も重要なのだ。
第2の誤解:UXを「単一接点における特定の瞬間の体験」としてしか考えられなくなってしまう
2つ目の誤解は、1つ目の誤解として紹介した「UX業務の大半はUIデザインである」という考えから導かれる。つまり、UXを検討する際には、すでに決められた要件に沿って、各製品・サービスにおける特定の瞬間の体験を個別に最適化すればよい、という誤解だ。
しかし当然ながら、ユーザの体験は単一接点のみで完結するわけではない。例えば、何か洋服を買おうとする際、ブランドサイトで商品を検索しそのままオンラインで購入する場合もあれば、「服選びに失敗したくない」という理由から、近くの店舗で商品を試着し、色合いやサイズを確かめてから購入する場合もあるだろう。後者の場合、UXはサイトのデザインだけでなく、店舗の空間設計やスタッフの接客態度にも関わる。
このように、ユーザはその時々の状況・文脈や目的に合わせて、オンライン・オフラインを問わず複数の接点を自在に行き来している。そのためUX業務においては、単一接点のみ、さらに言えば「ある瞬間やあるページのUI」のみを改善しているだけでは不十分だ。仮にオンライン接点での体験に問題がなくとも、サイトに掲載されていた商品が店舗に置かれていない、掲載イメージと大きく異なるなど、オンライン接点の情報とオフライン接点の実態に乖離があることで、ユーザの落胆や失望、ひいては離脱・休眠を招く恐れがある。
UXの正しい理解を社内全体に広めることが重要
UIとUXがセットで語られることで、UX業務が使いやすさの改善や特定ページのUI改善に偏る傾向が生まれ、活動が小さくなり、根本的な課題解決が出来ず、結果としてビジネス成果にも悪影響を与えているのではないだろうか。このような事態を回避し成果を生むためには、「UI/UX」という表記が上述の誤解を生む場合があるということを認識し、部署や役職を問わず、UXに関する正しい理解を全社的に広めていくことが求められる。
「経営者が知るべき『UI/UX』の誤解」第1章は以上です。
第2章「UXグロースの実現に不可欠なユーザ理解」では、なぜユーザ理解がUX活動において必須の基盤になるのか、なぜUIデザインより先にユーザ理解に取り組むべきなのか、その理由を解説しています。
Appendix:このテーマが気になった方におすすめの資料
- Appendix
- 今回ご紹介した「経営者が知るべき『UI/UX』の誤解」は、「UX」の正しい理解とUX活動の理想的なあり方をテーマにしています。このテーマに関心がある方には、以下2つのコンテンツもおすすめです。
▼レポート「もっと広いよUX ──あなたの作りたい体験はどのレイヤー?」
「UX」という言葉の指す範囲は広いので、人によって使い方が分かれがちです。このレポートでは、「UX」の幅広い全体像を4つの軸で整理し、全体観をつかめるように解説しています。
▼レポート「UX/CX経営 活動全図」
成果につながるUX活動は、ユーザ理解やUIデザインを含む企業全体の取り組みが調和することで初めて成立します。このレポートでは、企業の構造を「経営」「事業横断」「事業」「IT/データ基盤」という4つのレイヤーに分け、UX活動においてそれぞれに求められる役割・活動を解説しています。
ユーザ理解に基づく体験設計の支援に関心をお持ちの方は、弊社サービス「UXデザインコンサルティング」の紹介資料をご一読ください。また、ご質問やご不明点がございましたら、問い合わせ窓口までお気軽にご連絡ください。
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