2010年07月30日
疑う事からはじめる定量分析講座 〜その2(中級編)〜

株式会社ビービット
ユーザビリティコンサルタント
薮 義郎

広告施策を考える際にデータの分析は重要ですが、なかなか難しいという声をよく聞きます。その原因の一つとして、煩雑なデータを可視化できていないことが挙げられます。

今回は、データの可視化、および仮説・施策に結びつく分析のポイントを、ケース・スタディを通じてご紹介します。

【ケース・スタディ】
バナー広告のイメージカラーと訴求ポイントによりコンバージョンに男女差が出るのかの検証を目的として、ABテストを繰り返しました。その結果、以下の表 (図1)が得られました。

この表のデータを可視化して分析を行い、今後に行うべき一手を考えて下さい。ただし、どの広告もPVは同じであるとします。

ABテストの結果一覧

分析しやすいデータの可視化のポイントとは

「データを可視化する際の切り口はいろいろあります。例えば、広告ごとに男性・女性別のコンバージョン数(以下、CV数)を棒グラフにすることや、男女の CV数を2軸としてプロットすることが考えられます。可視化の方法は他にも考えられますが、ここではこの2通りで表現してみることにします。

図2では、広告ごとに男性・女性別のCV数を棒グラフにしました。また、各クリエイティブが男性・女性どちらに効いているのかを見るために、男性のCV数から女性のCV数を引いた差分を線グラフ(オレンジ色)でプロットしました。左から差分が大きい順に広告を並べているおり、左側に行くほど男性に効き、逆に右側に行くほど女性に効いた広告になっています。

広告別の成果を表示したグラフ

上記の2つのグラフを見れば、図3の方が、どの広告がどちらの性別に効くのかどうかがより理解しやすく、広告の特性を詳細に把握しやすくなっています。つまり、図3の方が目的としていた分析の検証に向いているのです。

男性・女性に効く広告が何かがひと目で分かる

これから分かるように、データを可視化する時には、

  • 分析目的に適した軸を選ぶ
  • ぱっと見て一目で理解出来るような表現形式(グラフ・図表)を選ぶ
ことが重要です。

仮説に結びつくデータ分析を行うには

さて、図3で広告一つ一つの特性が分かるようになりましたが、これだけでは仮説を立てたり、または次の施策を考えたりすることはできそうにありません。そこで、バナー広告のクリエイティブ情報(イメージカラーや訴求ポイント)も取り込んで、可視化してみましょう。

ここでは可視化の一例として、図3のグラフにイメージカラーや訴求ポイントの情報を載せてみました(図4参照)。

広告クリエイティブ別に成果をグラフで表示

図4では、青・黄・ピンク色の四角は広告のイメージカラーを表し、その下のワードは訴求ポイントを表します。

以下では本来の目的であった、男女別の広告特性に関して、図4から読み取れることを2点解説します。

(1) 男性には、「安い」という訴求ポイントは効くが、「実用的」は効かない。一方、女性には、「楽しい」という訴求ポイントは効きにくい。

例えば、男性の平均CV数を表す、赤色の縦線に注目してみましょう。「安い」という訴求ポイントが縦線より右側に集まっており、訴求が効いていることが分かります。逆に、「実用的」は左側にすべて位置しているため、男性には効いていません。(図5参照)

一方、女性の場合は、「楽しい」という訴求をしたバナーは女性の平均CV数以下であることが分かるため、効きにくい広告であることが分かります。

男性に効く広告クリエイティブの傾向を分析

(2) 女性のCVはイメージカラーに左右される。特に、女性には青がよく効く。一方、イメージカラーにより、男性のCVが左右されることはない。

訴求ポイントごとにどのイメージカラーが効いたのか調べてみましょう。例えば、「実用的」では女性のCV数は、「青>ピンク>黄」の順に小さくなっています。同様に、「安い」「楽しい」でも調べてみると、女性のCV数は「青>ピンク>黄」の順であることが分かります。つまり、女性はバナーのイメージカラーに左右されて、コンバージョンしているのではないかという仮説が立ちます。(図6参照)

逆 に、男性を調べて見ると、女性のような傾向はありません。男性は、イメージカラーよりも訴求ポイントにより影響されてコンバージョンするようです。

女性には広告クリエイティブのカラーが重要

分析、仮説から次のアクションへ

最後に、今後の施策についても考察してみましょう。

まずは施策につながる仮説を立ててみましょう。例えば、可視化したグラフを見ると、「楽しい」という訴求ポイントのバナーは3個中2つは男性平均を超えています(図7参照)。そのため、「楽しい」は男性に効きやすいのではないかという仮説を考えることができます。

広告クリエイティブが効いている仮説を分析

すると、イメージカラーが黄で、「楽しい」という訴求のバナーが男性に効いてないのはなぜか?という疑問が湧きます。このバナーの位置をよく見てみると、青いラインの上にあり、男性も女性もCV数が同じだったことが分かります。つまり、このバナーは男性ウケも女性ウケもするような凡庸なものだったため、それが理由でCV数が低かったのではないかという仮説が立ちます。

そこで、イメージカラーが黄で、「楽しい」という訴求のバナーを、クリエイティブの写真や画像を男性向けのイメージを強調して、男性のコンバージョンが増えるかという検証を行うということも考えられます。

以上のように、分かりやすくデータを目的に沿って可視化することにより、分析や仮説の幅が広がり、クリエイティブや媒体の特性を把握することが可能になります。同時に、次のアクションにつなげることが容易になるため、PDCAサイクルを回し広告効果を改善していくことができるようになります。

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