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UX重視のシステム開発ってどういうこと?「憑依」から始める体験設計の基本4ステップ

2026.09.04 Fri.

UX重視のシステム開発ってどういうこと?「憑依」から始める体験設計の基本4ステップ

UX重視のシステム開発ってどういうこと?「憑依」から始める体験設計の基本4ステップ

この記事は、主に企業のシステム系部門でご活躍の方や、グループ内のシステム系専門企業でご活躍の方に向けてお届けしています。こうした部門や企業のことを、本文の一部では便宜上「システム系部門」と総称しています。

なお、記事の内容は、藤井保文による無料動画『UX×システム部! 社内外のユーザ理解で加速する攻めのデジタル活動』から抜粋・再構成したものです。動画全編は下記URLよりご視聴いただけます。

1分でわかるこの記事のポイント

●システム系部門の間では、DX隆盛期からAI浸透期にかけて、UX設計力の強化によりさらなる価値の創出を模索する動きが拡大している
●UX設計力の強化には、体験理解力を始めとするスキルの獲得に加え、組織設計の最適化が重要となる
●ユーザ行動が常に変わり続ける現代においては、デジタルサービスを「ローンチしたら終わり」にせず、変え続けられるような開発体制が求められる

時流と背景:なぜ今、システム系部門にUXが求められるのか

システム系部門において、「UX設計力」の獲得を目指す動きが広がっています。その一例として、一般社団法人UXインテリジェンス協会(以下、UXインテリジェンス協会)が実施する「UX検定」の受検者においては、UX専門職ではないデジタル人材が占める割合が拡大しています(※)。この動きは、2つの時流がいわば合流する形で形成されたものであると考えられます。

第一の時流は、2010年代後半から2020年代前半にかけて盛んであった、DXの時流です。DX黎明期のシステム系部門が事業活動の基盤整備を主な役割としていたのに対し、時とともにデジタル上での企業活動が重要性を増す中で、その期待は「事業横断部門やデジタル戦略部門の描く構想を正確に具現化すること」へと変化していきました。

顧客向けアプリの開発や社内向けツールの設計のような、「使う人にとっての最適な体験を具現化する」専門性を求められる要望が増えたことで、システム系部門やSIerといったIT / システムに関わる組織において、UX設計力を獲得しようとする動きが活発になりました。

第二の時流は、2024年頃から現在に至る、AI浸透という時流です。AI、特にAIによるコード生成技術の進化により、システム系部門に寄せられる要望の「質」と「スピード」は大きく変化しています。

「質」の面では、コーディングのハードルが低減したことで、システム系部門以外のメンバーでも、「とりあえず動く」レベルのプロトタイプ開発を行えるようになりました。結果として、システム系部門には、そうしたプロトタイプの質的向上や複雑な構想の具現化など、高難度な要望が寄せられるようになっていきました。

「スピード」の面では、AIがプログラマーのパートナーとして機能するようになったことで、企業側からの開発スピードに対する期待が高まり、依頼が全体的に短納期化するという傾向が見られるようになりました。

この、AI浸透という時流による開発の高難度化・短納期化が、UX設計力の向上によって質の高いアウトプットを素早く生み出すことの必要性へとつながっています。

※『「UX検定基礎」2025年実施日程と受験者傾向の発表 ~エンジニア職やIT関連企業の受験が拡大』、2025年、UXインテリジェンス協会。
https://www.uxia.or.jp/news/detail_250203

UX設計に必要な4つの力:成功のカギは「憑依」にあり

UXインテリジェンス協会では、体験設計に必要な能力として4つの力を提示しています(画像参照)。本記事では、このうち最初の力にあたる「体験理解力」について掘り下げます。

画像出典:『【AI×UXステートメント】AI時代に必須となるUXの能力・人材・組織とは』、2026年、UXインテリジェンス協会。https://www.uxia.or.jp/news/detail_260608

体験理解力とは何か

体験理解力とは、「ユーザの見ている世界を理解する力」と言い換えられます。ある状況にいるユーザの姿を外側から観察するのではなく、そのユーザに見えている選択肢や関心事そのものを、その人自身の視点から発見する力を指しています。ユーザがその主観から見ている要素としては、例えば以下のようなものが挙げられます。

●置かれている状況
●達成したい目的
●課せられている制約
●与えられている選択肢

「憑依」──ユーザの見ている世界を捉えるメカニズム

体験理解の一つのゴールとして、ビービットでは「憑依できている」状態を置いています。「憑依」とは、理解すべき対象(ユーザ)の見ている世界を、ユーザ本人の視点で主観的に理解し、その行動をトレースできる状態のことを指します。この状態になれば、設計する体験全体やそこに盛り込む機能、あるいは細かなUIや表現に至るまでの各要素に対して、「こうなっている方が自然」「こうなると使いたくなくなる」とユーザ視点での判断が下せるようになります。

憑依に至るには、実際のユーザとの接触が欠かせません。事業部門が利用するツールやデータを整備する場合であれば事業部門のメンバーを、顧客接点やその運用のために必要なものを開発する場合であれば顧客を対象に、実際にどのような行動を取っているのかを観察していくことで初めて、ユーザの置かれている状況とそこで下す決断を知ることができます。

より具体的には、下記のようなステップで仮説の立案と実ユーザの観察を進めることで、憑依へと近づいていきます。

1.「自分がこの状況にいたとしたら?」という仮説を立てる
2.実ユーザの調査・観察でその仮説を検証する
3.「仮説と違う選択をした、なぜだろう?」というズレを起点に、解釈と方向修正を行う
4.このサイクルを繰り返し、ユーザの判断軸そのものを獲得する

憑依なしに体験設計を行うと、「この機能をユーザはどう思うだろう、どこまで変えていいんだろう」という疑問が都度発生し、確認作業に追われてしまいます。設計者自身がユーザ視点から評価を下せるようになるという点において、憑依を目指す体験理解には大きな効果があります。

UX設計を推進できる組織のつくり方:デュアルトラックアジャイル

スキルの獲得と並行して必要になるのが、組織体制の変革です。高難度化・短納期化する体験設計への期待に応えるには、次の2つの条件を同時に満たす組織である必要があります。

●ユーザ理解を促進し、体験の仮説から要件を導き出す組織
●要件を具体化し、検証を経て実装していく組織

この2条件を満たす開発体制の一例が、デュアルトラックアジャイルです。その名のとおり、2つのトラック(道筋)が並走するようなアジャイル開発体制のことを指しており、それぞれの道筋を担う2チームが緊密に連携する組織体制を基本としています。

2つのトラック、ディスカバリートラックとデリバリートラックの役割は、以下の表のように簡単にまとめることができます。

役割
ディスカバリートラック ユーザに関するインサイトの発見を担う。ユーザ体験に対する仮説の立案と検証を繰り返し、改善案を導出する。
デリバリートラック 開発とリリースを担う。改善案を高精度に具現化して素早く実環境に投入することで、新たなインサイトの発見に繋げる。

デュアルトラックアジャイルに求められるのは、体験理解と高速開発という2つの異なる専門性です。それらを実際の事業活動においてどのように行っていくのかは、ビービットの無料動画「UX×システム部! 社内外のユーザ理解で加速する攻めのデジタル活動」にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

もっと知りたい方へ:よくある質問

  • Q. システム系部門がUX設計スキルを獲得する際、最初に着手すべきことは?
  • A. 4つの力のうち最初の力である「体験理解力」の獲得から始めるのが基本です。目指すべきはユーザに見えている世界を外側からではなく内側から理解する「憑依」ですが、実ユーザとの接点を持ちにくい場合には、AIとの対話によって一般論としてのユーザ環境を理解しておくことが最初のステップとして有効です。
  • Q. デュアルトラックアジャイルと通常のアジャイル開発の違いは?
  • A. 通常のアジャイル開発は開発チームが単独で推進するのに対し、デュアルトラックアジャイルは「仮説検証(ディスカバリー)」と「実装(デリバリー)」を別チームで分業します。アジャイル開発のメリットとして、実装した部分から世に出すことによって、実ユーザからのフィードバックを収集しやすい点が挙げられますが、ここでの最大のリスクは「誰にも使われず、フィードバックが回収できない」点。デュアルトラックアジャイルは、実装前のクイックな仮説検証によって、そのリスクを最小化しています。
  • Q. 高難度化・短納期化するミッションを支える協業相手の条件とは?
  • A. システム系部門に不足しがちなケイパビリティ、特にUX設計スキルに長けた企業との協業は、その不足を補いミッションを大きく前進させる契機となります。ただし、「UX設計を外部パートナーに依頼し、自分達はその要件の具体化に徹する」というふうに完全な分業体制をとってしまうと、UX設計力を身に付けることができないため、UX設計を含めた開発体制の内製化に向けて、1つのチームとして協業できる企業を選定することが鍵を握ります。

もっと知りたい方へ:デジタル体験設計の理想形とは

本記事では主に、システム系部門が目下の取り組みとして身に付けるべきスキルや整えるべき組織体制を見てきました。ここでは、それらを通じて目指すべき、体験設計の理想形についても簡単に触れておきます。

デジタル体験に付きまとう「体験の穴」

技術の加速度的な進歩や新しいサービスの登場は、日常の行動を変え続けます。例えば「beReal」や「setlog」といったスマホアプリ(※)は、「一日のうち決まった時間に写真や動画を撮る」という行動を新たに生み出しました。こうした新しい体験が定着するたびに、既存のプロダクトには「体験の穴」、つまりその時点でのユーザの行動にそぐわない部分が生じていきます。企業が、デジタルサービスをつくる場合において「一度ローンチしたら終わり」という発想でいると、この穴を塞ぐことができず、次第に「古臭いサービス」へと向かっていってしまいます。

※beRealおよびsetlogは、写真や動画を特定の知人間で共有するSNSアプリ。いずれも、任意のタイミングで撮影したものを任意のタイミングでアップロードするのではなく、決まったタイミングで撮影したものを、そのままリアルタイムでアップロードする点に特徴がある。

では、生まれ続ける「体験の穴」に対して、システム系部門はどう向き合っていけばよいのでしょうか。変化するユーザ行動に合わせて改善を重ねていくための具体的な開発の型と、それを支える組織のつくり方については、動画『UX×システム部! 社内外のユーザ理解で加速する攻めのデジタル活動』にて詳しく解説しています。

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