【UX LIBRARY】AI浸透で経営・組織はどう変わるべきか 人間とAIの役割分担と価値創造
「UX LIBRARY」とは?
「UX LIBRARY」は、ビービットがこれまで発信してきたUXに関する知見・情報を厳選し、コンパクトに再編集してお届けするシリーズです。
1分で分かるこの記事のポイント
今回は、レポート「アフター生成AI 経営・組織変革はすでに始まっている」を再編集してお届けします。
この記事には以下の内容が含まれます。
●ユーザがAIを使って自身に最適な選択肢を選べるようになったことで、真に価値ある体験を提供できるサービスでなければ選ばれない時代が到来している
●こうした時代に対応するためには、AIを積極的に活用することで、個人や組織の思考力・生産性を高めていく必要があるAI時代にあっても生き残れる組織に変革していくためには、以下2つの方向で組織・個人の能力を高めることが有効である
●AI時代にあっても生き残れる組織に変革していくためには、以下2つの方向で組織・個人の能力を高めることが有効である
AIと学ぶ:「答えをくれる機械」としてAIを利用するのではなく、「思考・内省を促してくれる機械」としてのAIと対話することで学びを深める
AIと働く:複数のAIエージェントからなる自分専用の「チーム」をつくることで、個人の生産性を高める
イントロダクション:いまだ克服されていないAI時代の企業課題
2025年にビービットが公開したレポート「アフター生成AI 経営・組織変革はすでに始まっている」では、当時まだごく一部の先進企業だけが取り組んでいた人員削減・組織再編を取り上げ、そうした活動を実りあるものにするため、組織・個人に大きな変革が求められていると解説しました。
現在では、Agentic AIやフィジカルAIといったAI技術がさらに発展していますが、同レポートで取り上げた活動が達成されたわけではありません。むしろ、AI時代に求められる組織・個人の変革がようやく多くの企業に認知・重要視されるようになった、「まだまだこれから」の段階にあると考えられます。
そこでこの記事では、ビービットのレポート「アフター生成AI 経営・組織変革はすでに始まっている」を再編集してお届けすることで、AIが経営・組織・個人に迫る変化を改めて捉え直すとともに、これからの価値創出に不可欠な人間とAIの役割分担についてご説明します。
それでは「UX LIBRARY」本編をお楽しみください。
AIがもたらす市場変化と組織再編
初めに、AIがもたらした市場変化と、そうした変化に対応するために各企業が実施している組織再編を、いくつかの業界を例に挙げて概観する。
■ デベロッパー企業のケース
AIの発展はホワイトカラーの生産性を上げ、オフィスで働く人材を削減すると予想されている。人材の削減に伴い、企業はオフィスを縮小する方向に進んでいくだろう。こうした流れを受けて、あるデベロッパー企業の経営層は、企業のオフィス需要縮小、テナント料による収益減少を見込み、事業構造の見直しや新しい活動の検討を始めている。
■ 生命保険業界のケース
生命保険業界では、ユーザが自分専用の「パートナーAI」を使うことで、自分の状況や既往歴に合った最低限のオプションのみを選択できるようになり、結果として売上が縮小する可能性がある。ユーザとAIが「最適」と判断できる価値あるサービスを設計することが、これまで以上に厳しく求められている。
また、ユーザの行動と収益モデルが変わる中で、人員削減も検討されている。削減されるのは、人間特有の価値を出せる営業員ではなく、それを管理する中間管理職だ。早期退職者を募るケースもあれば、既存業務をAIに代替させ、生じた余力人材を注力領域にリスキリングするケースもある。
■ デジタル企業のケース
AIの導入による組織再編は、デジタル企業ではさらに急進的だ。株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)や株式会社サイバーエージェント、KDDI株式会社は2025年時点で、AIの活用を前提に人材を評価・配置すると発表している。デジタル企業では、AIスキルの多寡が個人のパフォーマンスに直結するものと捉えられ、重要な評価指標となりつつある。
組織改革における課題
企業がAIの発展に合わせて進めている組織改革を価値あるものにするためには、以下2つの課題を乗り越える必要がある。
課題①:「誠実なUX」に投資できるか
「パートナーAI」が情報収集を担うことで、企業とユーザの間にあった情報格差は是正されていく。その際、企業には「誠実なUX=使い続けてもらえる公正で価値ある体験」を提供するための投資が求められることになる。価値あるサービスだけが選ばれる市場では、情報の見え方を小手先で操作し、ユーザに「なんとなく良さそう」と思わせるためだけの「UX投資」は意味をなさない。
課題②:AI導入で人間の能力を拡張できるか
AIを始めとする新たなテクノロジーの導入は、人間の能力拡張を可能にする。しかし実際の組織では、AIのアウトプットを吟味・修正せずそのまま活用し、楽をしようとするメンバーも一定数現れる。このようにAIの言いなりになっていては、成長は実現しないし、そのような人材は徐々に淘汰されていくだろう。こうした危機感を社内に浸透させ、個人の成長を促せるかどうかも重要な組織課題である。
これら2つの課題を克服し、AI前提の組織に転換するためには、AI導入によって個人がいかに成長できるのかを理解しなければならない。以下では、AIを活用することによる個人の能力向上について、「AIと学ぶ」「AIと働く」という2つの観点から解説する。
AIと学ぶ:「思考・内省を促す機械」との対話
AIを活用する際には、AIは正しい答えをくれる魔法の道具ではないこと、人間自身がAIの回答品質に責任を持つ必要があることの2点に留意しなければならない。
先述のとおり、AIを「答えをくれる機械」として信用することが習慣化すると、人間の思考力は衰え、AIの答えを中継するだけの存在に成り下がってしまう。人間は、AIの回答品質をジャッジするための「品質基準」を持たなければならない。
品質基準に基づきAIの回答を評価するためには、その分野における「100点」の専門知識や思考力が必要になる。さらに、指示や教育を通じてAIの回答品質・価値を高められるのは、100点を上回る専門知識と思考力を持つ、いわば「120点人材」だ。このような人材を目指す際には、「答えをくれる機械」としてAIを利用するのではなく、「思考・内省を促す機械」としてAIを活用し、対話を通じて学びを深めることが有効だ。
AIと働く:「AIエージェントマネージャ」という働き方
生産性向上・価値創出の観点に立つと、エンジニアでない利用者も、目的に合わせたAIエージェントを短時間で自作できるという点が重要になる。GPTsやGemなどを活用することで、利用者自身が指示や設定を書き込んだAIエージェントを作成・公開することができる。
つまり、適切な指示・設定の入力と回答品質の保証ができる人材なら、複数のAIエージェントからなる自分専用の「チーム」を持てるということだ。目的をタスクに分解し、タスクごとに専用のAIエージェントを割り振って同時に働かせれば、あとは各AIのアウトプット品質を評価し、必要に応じて修正するだけだ。ただしそのためには、人間が「120点」の知識・思考力をもって、AIの回答品質をコントロールする必要がある。
このような、「AIエージェントマネージャ=複数のAIエージェントを自作し、必要に応じて使い分けたり組み合わせたりしながら業務を行う人材」という働き方は、一人あたりの生産性を数倍にまで向上させる。それに伴い、事業活動に必要な人員の数は減少すると考えられる。この変化こそ、AI時代の経営・組織改革を考えるうえで最も重要な点だ。
経営・組織改革では、「AIを導入すれば省人化が可能になる」と単純化するのではなく、AIエージェントマネージャをどのように確保するか、生じた余力人材をどう活用するか……といった、より具体的な観点に沿って戦略を考えていく必要がある。
UX LIBRARYは以上です。レポートの本編では、「ユーザ理解をAIで代替できるのか」などの論点を始め、UX活動におけるAIと人間の役割分担について詳しく解説しています。
Appendix:このテーマが気になった方におすすめの資料
今回ご紹介した「アフター生成AI 経営・組織変革はすでに始まっている」は、AIの発展・浸透に対応するための顧客体験やビジネスの変革をテーマにしています。このテーマに関心がある方には、以下2つのコンテンツもおすすめです。
レポート「AI人材育成の分水嶺 UXから考えるAI時代のコアスキル」
AIの導入・活用が各社で進んでいる一方、そうした活動が「ユーザに使われるツール・サービスづくり」や、それによる成果創出につながっていない、と課題を感じる企業も増えています。本レポートでは、ユーザに使われるAIツール・AIサービスをつくるために不可欠なUXスキルという観点から、AI時代のコアスキルを解説しています。
レポート「顧客接点戦略のリデザイン これからの2年で何を変えるべきか」
AI要約によるゼロクリック化や、Agentic AIによる行動の代行など、AI技術の発展が顧客行動を変革し続けている中、企業では顧客接点戦略を再設計しようとする動きが強まっています。本レポートでは、接点横断ジャーニー(複数接点を横断した顧客行動の流れ)に基づき、顧客接点全体の戦略を立て直す方法を解説しています。
ビービットでは、AI時代に対応するための組織変革を始め、UX起点のさまざまなご支援を提供しています。ご関心をお持ちいただけましたら、弊社サービス「UXデザインコンサルティング」の紹介資料をご一読ください。また、ご質問やご不明点がございましたら、問い合わせ窓口までお気軽にご連絡ください。
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