株式会社フジテレビジョン様データ活用・統合を推し進め「FOD」をグロースさせた、ビービットの体験改善サイクルと“泥臭い”伴走体制

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ドラマからバラエティまで、フジテレビの人気作をマルチデバイスで楽しめるFOD(エフオーディ)。2005年のサービス開始以降、各種配信サービスの中でも先駆的な存在として知られています。

もともと自社コンテンツの外部提供や人気作の見逃し配信を提供していましたが、2016年には過去作を含めた映像作品を月額制(サブスクリプション)で視聴できる見放題コース「FODプレミアム」を開始して本格的にプラットフォーム化へと方向転換しました。

このように長年動画配信事業に取り組んできたFODですが、その裏側では、ユーザのサービス体験を継続的に向上させていくUXグロースをめぐる課題が山積していました。

当時を振り返って「データ活用以前の問題だった」というFODは、いかにデータ活用を加速させ、『USERGRAM』を利用しながらUXグロースのサイクルを回せるようになったのでしょうか?

FODのデータ戦略班 村上 正成様とビービットの川合が、FODの成長を押し上げるグロース施策や、それを下支えするビービットの「良い意味でコンサルらしくない」伴走姿勢について語ります。

株式会社フジテレビジョン様

  • FOD データ戦略班
    村上 正成 様

株式会社ビービット

  • XDビジネスマネジメントチーム
    マネージャ
    川合 洋輔

「思い出の一作」も「トレンドの最先端」も

——FODは映像作品はもちろん、漫画を含めた電子書籍も豊富に提供するなど、民放発のサービスとして先進的な取り組みをしてきました。そのなかで、FODを通してユーザである視聴者に提供したい体験価値とは何でしょうか。

村上 正成(以下、村上)様:FODが提供したいのは、豊富なコンテンツ量を活かしたリッチなエンタメ体験です。

テレビ局ならではの制作力やコンテンツへの嗅覚はそのままに、ネット配信の最大の強みである「個別最適」を掛け合わせる。それにより、新たな体験価値をユーザの皆さまにお届けすることが私たちのミッションです。

昨今暗いニュースが絶えません。だからこそ私たちは、エンターテイメントを通して人々に元気を与えたい。

FODの「ここにしかない出会いがある。」というブランドメッセージには、ユーザの皆さまの生活に寄り添い、彩りを添えたいという願いが込められています。

コンテンツとの新たな出会いを通して、笑ったり、泣いたり、ドキドキしたり……。FODをご利用の皆さまには、そんな感情を揺さぶられる体験をしていただきたいと思っています。

——多数のコンテンツプラットフォームがある中で、FODはどのような強みで差別化しているのでしょうか。

村上様:冒頭でも少し触れたとおり、FODの要はテレビ局ならではの制作力を活かした国内ユーザ向けのリッチなコンテンツです。最近では人気BL(ボーイズラブ)作品『オールドファッションカップケーキ』(FODオリジナル)が大ヒットしたり、『東京ラブストーリー』(1991年)のリメイクが2020年に話題になったりするなど、FODオリジナルでも“ドラマのフジ”は健在です。

『東京ラブストーリー』では、放映当時を知らない若い世代を持つ親御さんから「コンテンツを通して母娘の会話が生まれた」といった反響が寄せられることもあり、時代を映し出してくれるエンターテインメントの持つ力を再認識させられています。

株式会社フジテレビジョン FOD データ戦略班 村上正成様

不足していたユーザファーストの視点

——そんなFODですが、UXグロースにどのような課題を抱えていたのですか。

村上様:2019年夏に私がFODの担当になった際、激しさを増すVOD業界の競争でさらにFODを成長させるには、ユーザへ最適化することが最も重要なミッションでした。UXグロースはもちろん、そのためのPDCA体制の構築、さらにデータ分析の環境づくりなど大規模な改革の必要性を感じていたのです。

2020年ごろにデータプロジェクトを立ち上げてからは、環境整備をはじめ、データ分析も進み、FODのロイヤルユーザの姿が見えてきました。少しずつデータに基づいた施策を実施できるようになっていましたが、施策のPDCAがなかなかうまく回っていかない課題を感じていたこともあり、2021年夏ごろに、ビービットさんのご提案をいただいたのをきっかけにご一緒することになりました。

散発的な施策、散逸したデータから、ひとつひとつを整える

——具体的には、どのような施策を求めていましたか。

村上様:一般的なテレビ向けの施策と比較してみますと、これまでテレビ局で重要だった指標は、番組放送のタイミングでリアルタイムにどれだけ多くの人にテレビの前に座ってもらうか(視聴率を上げられるか)でした。

一方でサブスクリプションモデルのネット配信に求められるのは、契約者にどれだけ継続的に利用していただくか。テレビとは勝手が違うところも多く、これまでのノウハウが通用しない局面も多々ありました。

たとえば、「アプリの改善」とひとくちに言っても、デザインのブラッシュアップはもちろん、レコメンド機能の強化や、プッシュ通知を送るタイミングの最適化なども考えなければなりません。

契約継続につながる施策に関してもそうですが、UXグロースとはどのようなものかについて、理解が乏しい状態でした。

——まずはビービットのユーザ行動分析ツール『USERGRAM』を導入したと聞きましたが、その背景を詳しく教えていただけますか。

村上様:FODが『USERGRAM』を導入したのは2017年冬ごろのことでした。

FODをグロースさせるにあたり、しっかりとデータを見ながら施策を打っていきたい。けれどもデータに基づいて意思決定することができない……。そこで、ユーザがどこからサービスに流入し、どのような動線を描くかビジュアライズしてユーザ理解を深める『USERGRAM』の存在を知り、これならスピード感を持って導入できるということで契約に至ったと当時の担当者から聞いています。

ところが、導入はしたものの、それを使いこなす人的な体制が整っていませんでした。私がFODのチームに入った2019年には、『USERGRAM』はあっても、定量的なデータ分析環境が整っておらず、「このデータはこちらのツールで見て、別のデータはこちらの表に記載していて……」という具合にデータの格納場所がばらばらでした。

「施策を実行する以前の問題だ」と感じた私は、一念発起してデータ統合を実施。ようやく2021年ごろに基盤が整い、おすすめコンテンツのレコメンドやプッシュ通知も徐々に最適化できるようになりました。けれど、単発での改善は行っていたものの、継続的なPDCAのサイクルを回すことがなかなかできないという壁に直面しました。

チームビルディングが大きな課題になったのです。

というのも、テレビ局にはコンテンツ制作のプロが圧倒的に多く、Webマーケティングのプロがほとんどいないんです。FODでデータを利活用するためのチームには専任がおらず、他の仕事と兼務していたため、FODのグロースに専念するにはあまりに脆弱な体制でした。さらに、デジタルの知見も圧倒的に足りませんでした。

これでは、どれだけ良いツールを導入しようと、環境を整えようとも効果は出にくい。「ようやくデータの分析基盤を整えられたのに、肝心のPDCAを回す人がいないじゃないか」と天を仰ぐ気持ちでした。

ビービットの支援で、データをもとに意思決定・改善できるチームの形が見えてきた

——そして、ビービットにご相談いただいたのですね。

村上様:UXグロースコンサルタントである川合さんと出会ったのは、そんな八方塞がりの状況に頭を抱えていた2021年夏ごろのことでした。はじめは「どこまで深く関わってくれるのかな」と半信半疑でしたが、いざお話をしてみると、とても誠実なお人柄であることが伝わってきた。もちろんプロフェッショナルな提案だったので、「救いの神か」と思いました(笑)。

川合 洋輔(以下、川合):私たちXDビジネスマネジメントチームのミッションは、お客さまの業務サイクルに『USERGRAM』を活用したユーザ視点のUXグロースを深く組み込んでいただくことです。

一過性の提案で終わるのではなく、お客さまが自らデータを分析し、施策を実施し、効果を検証して次回の施策につなげるサイクルをワンストップでご提案する。そして、このサイクルをお客さま自身が円滑に回せるよう共に悩み、共に改善を繰り返して伴走することにこだわるのが、私たちXDビジネスマネジメントチームの強みです。

フジテレビ様のように、自社サービスに情熱を燃やし、外注頼みでないUXグロースを実現したいと考える企業は増えてきています。しかし、実際にPDCAサイクルを回すには、まず業務全体を俯瞰で把握する必要があり、日々忙しいエンタープライズの企業の中には、「そこまで手が回らない」という方も少なくありません。

そこで2020年夏ごろに立ち上がったのが、お客さまの“右腕”となってUXグロースの土台構築のサポートを行うチーム(XDビジネスマネジメントチーム)です。「弊社の仕事はここまでです」と線を引いてしまわず、ときには垣根を越えながら徹底的に伴走するのがこだわりなんです。

村上様:デジタルマーケティングの知見が豊富ではなかった私たちにとって、こうした姿勢は大変ありがたいものでした。良い意味で“泥臭い”というのか、私たちのサービスを深く知ろうとしてくださっているのが伝わってきました。提案資料をくれて終わりのコンサルタントとはまったく印象が違いました。

株式会社ビービット XDビジネスマネジメントチーム マネージャ 川合洋輔

── 具体的にどのような提案内容だったのですか。

川合:データはそろってきたものの、その次のステップに進めていないというお話でしたので、お手持ちのデータを生かしてプロダクトをグロースさせるための意思決定ができるようにしませんか、とご提案しました。

データを読み解き、それを踏まえてどの機能を強化し、実装すればいいのかというのは、デジタルマーケティングやプロダクトマネジャーとしての知見がないとなかなか難しい部分があります。

その部分を、最初は私たちUXグロースコンサルタントが伴走しますが、最終的にはFODチーム内でPDCAを回して自走できるようにするのが目標です。

具体的には、改善テーマを決め、データから課題を抽出して分析し、体験改善のための施策・機能を立案して実装、そしてその効果検証まで行うという流れです。

村上様:改善テーマに応じて、当社の人間なのかなというくらいとことん競合プラットフォームの調査を行ってくださったんですよね。

川合:ええ。私は40代なので、違った世代の話も聞いてみようと新卒メンバーに動画コンテンツとの関わりをヒアリングしました。他にも、妻やその周りの友人にFODを実際に使ってもらい、正直な使い心地をたずねることもありましたね。

こうした丁寧なヒアリングを重ねることで、数字からは見えてこないユーザの心情への理解が高まり、より肌感のあるご提案をすることができました。

村上様:この姿勢がとても嬉しかったんです。しかも、提案も的確で質がいい。確か、初めにご提案いただいたのは登録導線の改善でしたね。

川合:はい。登録動線の改善は、うまくいった場合のインパクトが非常に高いタスクであるため、真っ先にご提案しました。

というのも、『USERGRAM』でユーザの動きを分析してみますと、各ステップでの離脱率が他と比較して高かったんです。そこで詳しく画面を見てみると、ユーザへの負荷が高い箇所が多数あることがわかりました。

具体的には、入力項目が多すぎるとか、登録ボタンが「無料トライアルに見えない」デザインであるとか……。コンテンツとの出会いを楽しみにしているユーザの気持ちを削いでしまう部分が多々あり、改善を要すると判断しました。

村上様:2021年に実施したこの改善には2週間後にまずはっきりと効果が現れ、ユーザ登録者数も順調に伸びています。現在は第二弾の改修に向けて動き出しており、1ヶ月単位でPDCAを回しながら各施策の実施・検証を行っています。

川合:振り返ってみると、2次改善、3次改善を繰り返すことでどんどん数値が良くなっていくサイクルをつくれたのが良かったなと思っています。

村上様:お気に入りのコンテンツを登録する「マイリスト」を活用してもらうと、契約の継続率が上がるので、今後はその改修も検討しています。

ビービットさんの協力を得て、課題であったチームビルディングもずいぶん進展しました。まだまだ自走に向けては段階がありますが、「PDCAサイクルってこう回すんだ」という感覚がつかめてきた。ばらばらのデータと少ない人員を前に途方に暮れていたのは、もはや遠い過去のようです。

今後は、川合さんに伴走してもらっている状態をなんとか“卒業”し、自分たちの力だけでUXグロースを推進していくのが目標ですね。コンテンツの強さに甘えることなく、ユーザの皆さまにより価値のあるエンタメ体験をご提供できれば、これほど嬉しいことはありません。