Date : 2022

07

21Thu.

メタバースをオートで生きる世界は来るのか

アフターデジタル

UXインテリジェンス

隔週木曜日にCCOである藤井保文がニュースレターを配信しております。その中から、今回は【「メタバースをオートで生きる世界は来るのか】をお届けします。

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メタバースをオートで生きる世界は来るのか

先日、黒鳥社の若林恵さんのところにお邪魔して、メタバースやNFTを軸に世の中がどう変わっていくのかを議論してきました。その時の議論は、まさにアフターデジタルといわれる内容よりもさらに先に進む世界観で、あまりに示唆的だったので、一部をご紹介したいと思います。

マインクラフト内のプロ建築設計屋

これは若林さんが書かれているQuartz Japanのニュースレター、「週刊だえん問答」の#84「マインクラフトの新経済」にも書かれていることでした。超おすすめですので是非。
https://qz.com/emails/quartz-japan/2103857/

そこでは、Varunaという企業を紹介しているのですが、この企業がとんでもなくて、「マインクラフトの中における都市や建物を作る仕事を引き受ける、マインクラフト専門の建築家集団」のようなものらしいんです。暇なゲーマーがやっている、みたいなものではなく、本物の建築家やデザイナーから出来ている、ちゃんとした企業だそうです。

サイトを見ていただくと、どんなものか分かっていただけると思います。
https://varunabuilds.com/

若林さんご本人の口からも伺ったお話で、上記のニュースレターにも書かれていたのですが、知り合いの方の息子さん(高校生)が「大学で建築を学びたい」というので、「建築はもはやそんなに将来性がない仕事なんじゃないか」と伝えたところ、「お父さん、リアル空間で建てるのだけが建築じゃないからね」と言われて唖然とした、というエピソードを伺いました。

メタバースに関してよく挙げられる議論として、「実生活がある中で、実際に仮想空間上に入り浸ったりすることは考えにくいのではないか」という話があります。VRのヘッドセット(ヘッドマウントディスプレイ)も、ずっと昔からあるのになかなか定着しませんし、可処分時間や仕事が存在する中で、「そちら側」で活動するにも限界があるだろう、という意見です。

ただ、私たちの時間が本当に24時間か、と言われると、デジタル空間でダブルが存在できる環境においては、そうとも限らないだろうと思っています。

可処分時間の二重化

単純に読まれること、PVを稼ぐことを考えればこれで良いのですが、本当に伝えたいことを書くならあまりバズワード的な言葉で濁らせたくないわけですから、コンテンツを作る身としては困ったものです。

以前、このAFTER DIGITAL Inspiration Letterでも、「放置という技法~ゲーム・エンタメから学ぶUXその1」という投稿をしましたが、まさにそこでも「可処分時間の二重化」という言葉を書きました。

最近のゲームでは「オート」のモードが充実していて、レベル上げであれば勝手にやらせておくことができます。そうしたオートモード(=放置モード)を使う時のマインドセットから見えてくるものを書いた文章を、改めて引用してみます。

❝最近のモバイルゲーム、ソーシャルゲームには、PlayStationなどの「家でやる据え置き型のゲーム」からは考えられない機能がついています。それが「勝手にオートで戦ってくれる」「放置しておくと勝手に強くなる」というものです。

例えば分かりやすい例だと、CMなどもやっている「放置少女」。アプリを開いていなくてもゲームが進行するシステムで、隙間時間にログインするだけで大量の経験値やアイテムが獲得できます。もちろん、設定を変えたり介入したりすることも出来ますが、基本放っておいても進行します。

正直、ファミコン世代からすると「どういうこと?」「それって遊ぶ意味あるの?」と思ってしまいますが、有名なゲームであっても同様の仕組みは入っています。

  • ポケモンGoの「いつでも冒険モード」。アプリを閉じていても距離と位置を記録してくれるので、移動距離に応じてポケモンが生まれるタマゴが、アプリを閉じていても孵化してくれます。
  • ドラクエウォークの「WALKモード」。これはアプリを開いたままにする必要がありますが、自動で敵と戦ってくれるので、キャラクターが勝手に経験値を稼いでレベルが上がったり、お金を稼いだり、アイテムを集めたりしてくれます。

テレビの前に身構えてスイッチを入れ、集中してやるような据え置き型とは異なる、日常的に携帯するモバイルゲームだからこその機能だと言えます。

こうしたゲームにハマってみると、当然ゲームの攻略を効率化したり、なるべく強くしたりしたくなります。そうなると、「今から携帯を触らないぞ」という時に、準備をするようになります。

例えば「今から結構歩くぞ」という時、ポケモンGoであれば「せっかくたくさん歩くんだからちゃんとタマゴをセットしなきゃ」、ドラクエウォークであれば「ウォークモードに変えておかなきゃ」という風に考えるようになります。日常で生活していて、「あ、このタイミングであの設定にしておかなきゃもったいない」と考えるようになるのです。そうするとたくさん歩いた後に、その報酬を見るのがとても楽しみになります。

こうした歩行系のゲームでなくとも、例えば私がプレイしている「ニノ国 クロスワールド」(ジブリがキャラクターや世界観のデザインを行なっているゲームのモバイル版)では、AI戦闘モードにしておけば勝手に戦ってくれます。そうすると、寝る前に「経験値が30分間2倍になる薬を飲んで、なるべく稼げる場所でAIモードにしておこう」と思うようになります。このゲームはほぼ戦闘が自動化されているので、画面さえ定期的にタッチしておけば、どんどんストーリーを進めることもできます。

実は、SNSでもこれに近いことをやっている方もいるのではないでしょうか。例えば仕事に入る前に投稿しておいて、仕事中は放置しておき、お昼休みに「さて、朝の投稿にどれくらい『いいね』がついているかな」と楽しみになったりします。SNSの場合、これは皆さんが楽しみ方を自ら編み出してやっていることですが、モバイルゲームにおける放置やオートは、この楽しみを「やっておかないと損」「賢く時間を使うともっと成長できる」というインセンティブに転換して、ゲームの方から働きかけてきます。❝

このような現象を考えると、メタバース上に存在しているからといって、必ずしも自分がプレイしていなければいけないかというとそういうわけではなくなります。単純な作業をオートで走らせておくことで、メタバース上での自分のタスクをこなし、現実世界では友達と旅行に行っている、みたいなことも十分にあり得ます。この考え方からすると、アバターにオートで活動をさせ、自分の時間を二重化することができる、というわけです。

オートの時間に、勝手に友達や恋人を作ってきてたら、まあまあ困るなあと思うので、レベル上げや探し物など、単純な作業のみを自動化できることになると思うのですが、もしかしたら「その仮想空間内でこういう作業を自分のアバターにやらせておく」というプログラム自体が販売されるようなことも起きてくるのではないかなと思います。

ディストピアシナリオの重要性

ここまで想像していると、箱庭のような形で、自分のコピーをとある空間で生きさせたらどのように生活するのか実験して観察する、ということが想像されますが、Netflixシリーズのブラックミラーにも、自分の脳をシュミレーションしたキャラクターに行動させることで、未来予測をしたり、実際には1分だがバーチャル空間上で長時間拘束して犯罪を自白させたり、といったストーリーがいくつか展開されていました。

こう考えると、ブラックミラーのような「行き過ぎたデジタル社会におけるディストピア的シナリオ」を集めてくれるのは、本当にそんな現実が見えてくる世の中で、何に気を付けて環境やプログラムを設計すべきか、教えてくれるように感じます。漫画の「えれほん」あたりも、あまりにも行き過ぎた設定なのでとてもおすすめです。
https://www.amazon.co.jp/dp/B085DQV5ZC

世の中の発展は、フィジカルな方向で空飛ぶ飛行機やワープなどが実現するのではなく、デジタル空間という、宇宙とは別の新たな空間が開けた結果できるようになったことがたくさんあります。その意味ではこうした「想像・妄想」が本当に力を持ち、気づきを与えてくれる時代になっているなと、急激に感じられる世の中になってきたように思っています。

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