ある住宅のウェブサイトでは、ウェブサイトと集客の改善に行き詰まっていました。
集客に関しては、流入経路別の費用対効果を鑑み、広告出稿を最適化しました。また、ポータルサイトに出稿する原稿も、バナーのクリエイティブも、ABテストを繰り返し、最適と言えるものにたどり着いていました。
サイト内のUIも、ボタン文言やパーツデザインなどABテストを繰り返していました。最近だと物件内を360度で見られるようにもして、業界内では最大レベルのコンテンツ量です。
最新の外部APIなども効果的だと思われるものは全て取り込んでいるつもりでした。
それなのに、なお、さらなる数字を上層部から求められていました。1件成約した時の金額が大きいので、1件でも「物件来場」に送客できると売り上げへの影響が大きいのです。
それはサイト担当者も重々わかっていましたが、もうできることはないと思っていました。
ユーザ行動を見るとユーザがサイトを利用する「文脈」が見えた
「とにかく30人分のユーザ行動を見てみてください。」
こう言われて導入した、「USERGRAM」。半信半疑ではありましたが、行き詰まっていた担当者は、とにかく見てみることにしました。「USERGRAM」は、ウェブサイト上の各ユーザの行動を可視化できるツールです。
1時間ほどかけて、30人分のユーザを見てみました。するとサイトに訪れるユーザに大きく4パターンいることが見えてきました。
■Aパターン

・会社名の指名検索で流入
・自社サイトで物件を探す
・自社サイトで物件を見比べ、物件来場予約に至る
・滞在時間は10分程度
■Bパターン

・ポータルサイトから流入 、または物件コードで検索して流入
・その物件のページのみを閲覧
・物件来場予約をすることもあればそのまま離脱することもある
・滞在時間は3分程度
■Cパターン

・メルマガから流入
・その物件のページのみを閲覧
・離脱後、再度同じメルマガから別の物件を閲覧することもある
・物件来場予約をすることもあればそのまま離脱することもある
・滞在時間は1分程度のことが多い
・長期間にわたって、定期的に何度かサイトに訪れる
■Dパターン

・バナー広告から流入
・その物件のページのみを閲覧
・物件来場予約をすることもあればそのまま離脱することもある
・滞在時間は1分程度のことが多い
是非少し、考えてみてください。この事実をどう解釈しますか?
「文脈」を捉えられると改善が見える
この住宅サイトの担当者は、同じ物件ページに流入するユーザでも、ポータルサイトから流入するユーザとメルマガから流入するユーザでは全然違うことに着目しました。

ポータルサイト経由で流入したユーザは、ポータルサイトで物件情報を絞り込んで、気に入って、さらに追加の情報を求めて公式サイトである自社サイトに流入して来たユーザです。滞在時間も比較的長く、じっくりページ内でコンテンツを探しているように感じました。
そうだとすれば、ポータルサイトを見た上で何を公式サイトに求めているのか、何を伝えるとより「良い」と思っているのか考える必要があります。
一方、メルマガ経由で流入した人は、長期間にわたって時々くるというユーザでした。つまり、この段階で情報収集はあくまで受動的。メルマガの中で、たまたま「いいな」と思う物件があれば、メールの中のリンクをクリックして情報を見ているという状況だと推測されました。おそらく、検討段階がまだ浅い段階ということでしょう。そうだとすれば、検討フェーズが進んだ時にいかに自社を選んでもらうかを考えていく必要があります。
サイト改善はやり尽くした、もう何もできることはないと考えていた担当者ですが、1人1人のユーザ行動を見てユーザの文脈や検討状況を捉えることで、サイトの改善余地をまだまだ見つけることができたのでした。
定量データで行き詰まったとき、定性データに立ち返る
1時間ほど時間を使ってUSERGRAMを見てみてください。
サイトに訪れるユーザは、どういう行動をしているのか。何を期待してサイトに来訪しているのか。
ユーザ行動を1人ずつ、どのページを何秒見ているのか観察すると、それらユーザの「文脈」がみえてきます。そしてそれを30名ほど見ると、ユーザの行動パターンが数パターンに分類されてきます。
そうすると、それらユーザ文脈を元に、サイトをさらに磨き上げていくことができますよ。