第33回 アイトラッキング調査をサイト改善に活かすには?

ビービットではアイトラッキング調査の可能性について研究しています。

消費者のニーズや意識を調査する際、意見ではなく行動を重視することの重要性はこのコラムでも何度か紹介してきました。

例えば、ユーザビリティテスト(ユーザ行動観察調査)やアクセスログ解析では、調査の結果明らかになったユーザ行動をパターン化して分析することで、その背景にあるユーザニーズや意識を把握するのに高い効果を示しています。

そして、今注目を浴びているのがアイトラッキング調査です。

アイトラッキングとは、人間の目(眼球)の動きや注視点を測定する手法のことです。

「目は口ほどにものを言う」という言葉がありますが、調査においては「口=発話、言葉」は調査協力者が恣意的に操作する傾向が強いのに対し、「目=視線」は反射的な動きを捉えるため人間の無意識下にある情報までも引き出すことができると言われています。

一昔前のアイトラッキング調査では、調査協力者に小型カメラのついたゴーグルを装着してもらう必要があり、このような不自然な状態での調査結果については信憑性が問われていたのですが、近年、特にパソコン画面に対するアイトラッキングは日常と全く変わらない状態で調査が行えるようになりました。

調査協力者の負担が少なくなったことから、ビービットでもアイトラッキングシステムを導入し、その活用範囲についての研究を進めています。

実際にアイトラッキング調査を行うと、ユーザに閲覧されているものと、閲覧されていないものが明確になるため、インターフェースの設計やデザイン、レイアウトの検証に役立てることができます。例えば、大きく目立つように作成したバナーやサイトのブランドエリアであっても、ユーザにとって不要なものは、まさに「目もくれない」という結果がよく出てきます。

また閲覧箇所や閲覧順序、注視率からユーザニーズを類推することもできます。その他、発話が苦手な調査協力者であっても、視線データが残るため、実際に行った操作とアイトラッキングの結果を重ねて分析することで、操作中に考えていたことを想定することができます。

このように、これまでの調査に新たな視点が加わるという点で魅力的な調査手法ですが、サイトのユーザビリティの改善やユーザニーズ調査をアイトラッキングだけに依存するのは危険です。他の様々な手法同様、アイトラッキング調査にも限界があります。

アイトラッキング調査では、確かに目線の動きやどこを注視していたかという事実のデータは取れますが、それだけでは単に目線がこう動いた、あるものに注目したというだけで、人が真の意味で見ているか(認知しているか)までは把握できません。

実際に、「GyaO」の映画ページをアイトラッキング調査した結果、目線は確かにある映画紹介を見ていたにも関わらず(画像参照)、ユーザにそのことについて尋ねてみると全く記憶にないことが多くありました。

また、ある対象物を注視していた結果が出たとしても、それを「好ましい」と感じていたのか、「好ましくない」と捉えていたのかはアイトラッキングデータだけでは分かりません。さらに例えばそれを「好ましい」と捉えていた場合、なぜそう思ったのかという洞察までを行わない限り、サイト改善にデータを活かすことはできないのです。

このような限界を踏まえ、アイトラッキング調査によって得られる「目線の動き」という事実データに、量的な裏づけとなるログデータの解析、また行動の裏側ある背景心理を導出できるユーザビリティテスト(ユーザ行動観察調査)による質的調査も加えて総合的に分析することが重要です。

そうすることで、ウェブサイトにおける人間の認知活動をこれまでに比べ飛躍的に精緻に把握・洞察できるようになります。この意味でアイトラッキング調査は画期的です。

技術の進歩によって補足可能となったアイトラッキングデータは、インターネットメディアのさらなる発展・洗練をもたらす大きな可能性を秘めているのです。

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2006年1月 ユーザビリティ実践メモ公開
1000回以上に渡るユーザビリティテスト(ユーザ行動観察調査)の結果をもとに、ウェブサイトのユーザビリティを上げるための実践ノウハウを公開しています。