学生向けお部屋探しアプリの開発を企画段階からご支援。「既存のお部屋探し体験のアップデート」とは?

アットホーム株式会社 様

不動産情報のアットホームから、全く新しいお部屋探しアプリが登場

2018年12月、不動産情報サービスを提供するアットホーム様が、「学生のためのお部屋探し」アプリをリリースされました。リリース後3ヶ月で、賃貸物件情報を求める新入学生(新大学生・新専門学生)の40%にあたる95,000ダウンロードを突破したこのアプリの開発を、ビービットは初期段階から支援していました。

「既存のお部屋探し体験をアップデートする」ことを目指したアプリ開発プロジェクトについて、アットホーム オンラインメディア事業部の瀬良 政彦様と、プロジェクトの際ビービット側の担当だった小城 崇(シニアコンサルタント)に話を聞きました。

プロジェクト開始前 - ミッションは「既存のお部屋探し体験をアップデートせよ」

不動産情報ポータルサイトを運営されているアットホーム様では、2018年にアプリプロジェクトが立ち上げられました。既にあるアプリの運営は一切行わず、これからのサービスを作ることを求められた組織です。

ミッションは、「新しいアプリを企画して、既存のお部屋探しをアップデートすること」。掲載物件数や広告投下量が圧倒的な競合他社がいるこの業界の中で生き残るためには、これまでのお部屋探しの常識を疑い、全く新しいお部屋探し体験を創造しなければいけない、という背景がありました。

瀬良様「本当に使ってもらえるものを作らなければ、という思いは強かったですね。そこでまず、スマートフォンのアプリを使うのは若者が多いだろうということから、学生をターゲットとすることに決めました。しかし、プロジェクトのメンバーもアプリをゼロから企画した経験はなく、具体的にどう進めるのがベストなのかが分からず、自信を持って進めることができない状態でした。」

アットホーム株式会社 オンラインメディア事業部 瀬良政彦様

仮説検証型で体験を作る姿勢に感じた可能性

そこでプロジェクトメンバーは、アプリの企画を一緒に考えてくれるパートナー企業を探しました。

その中でビービットにご発注をいただいたのは、仮説検証型でプロジェクトを進めていく、というスタイルに共感したことが大きかったとのこと。

瀬良様「ビービットさんが他の会社と違ったのは、ユーザ行動観察を実施することでユーザの肌感を持って仮説をブラッシュアップしていくという方法論と、そのプロセスを説明する姿勢を持っていたことです。」

小城「ビービットでは、プロジェクト初期にユーザ像や既存サービスのペインポイントに関する仮説を多く立てます。仮説を持ち、それを検証する姿勢でなければ見えないものがあるからです。

そしてその仮説は、ユーザの行動を見ることで精緻化されていきます。ときには初期の仮説が全く見当違いだった、ということもありますが、最初の思いつきに固執することなく、本当に価値の出るポイントを見定めようとする姿勢は、ビービットのコンサルタントに共通するものです。

また、そういった検証のプロセスをクライアントに説明することも、おろそかにしてはいけないと考えています。どんなに良いものを提案したとしても、説明と納得がなければ組織は意思決定ができないからです。」

株式会社ビービット シニアコンサルタント 小城崇

瀬良様「実は私も、本当に使ってもらえるものを作るためにはユーザの声を聞かなければいけないと常々思っていました。これまでは経験をもとに、いわばヒューリスティック的にメディア改善・運営をしてきましたが、それでは限界がある。そういった意味でも、ユーザを起点にするビービットさんのやり方なら、良いものが作れそうだと感じたのです。」

ユーザ行動観察調査の衝撃、お部屋探しサイトなのに住みたいお部屋を探せない

こうして始まったプロジェクトは、電話インタビューなどを通じてこれまでのお部屋探しのどこにペインポイントがあるのかを探ることから始まりました。

小城「実際に話を聞いてみると、ほとんどの人が大学に進学するときが初めての引越しでした。お部屋探しについても知識がなく、引越し先の土地勘もないので、物件の良し悪しが判断できない状況に置かれていたのです。」

しかし、既存の物件情報サービスは大量の物件情報を閲覧することを前提としたものばかり。判断基準がない状態で大量の情報に触れるため、結局はウェブサイト上でお部屋を選びきれず、不動産会社のリアル店舗に流れていくユーザが多かったのです。

このことは、ユーザ行動観察調査の中でも浮き彫りになりました。

瀬良様「一番印象に残っているのは、お部屋探しをすることそのものが面倒くさいと言う学生さんがとにかく多かったことです。考えてみれば昔は自分もそう思っていた時期があったはずなのですがね。この仕事に就いてからは物件選びにはこだわるということが当たり前になってしまっていました。提供者とユーザの意識のギャップに気付けたことは、このプロジェクトに限らず今後のメディア方針やサービスプランを考える上で非常に重要だったと思います。」

お部屋探し初心者が物件を選びきれない理由を、次のように捉え整理しました。

これまでの物件情報サービスは、実現したい暮らしのイメージ、こだわりの条件化、予算を踏まえた条件の取捨選択という「希望と計画」がある前提で「物件情報の中から基準を満たすものを見つける」という最後のステップに特化してサポートしています。そのため、希望と計画が明確になっていないお部屋探し初心者が既存サービスを使うと、知識がない中で全ての検討を同時並行で進めるという複雑なことをしなければならず、選びきれないという結果につながっているのです。

新アプリのコンセプト:先に計画を立てることで判断基準をつくる

そこで、いきなり物件情報を見せるのではなく、「先に計画を立ててからお部屋を探す」というアプリの全体コンセプトを立てました。同時並行しなければならなかった検討を1つずつ終わらせていくことができるように、ユーザの体験を設計したのです。

計画を立てるフェーズでは、間取りや駅徒歩分数など、こだわり条件を1つずつ設定していきます。お部屋探し初心者がつまずきそうなところには「?」マークがついていて、解説が読めるようになっています。

計画フェーズの画面イメージ

画面の下部には入力した条件に応じた家賃相場が表示されているので、自分の予算にあわせて条件を調整することができます。また、こだわりの条件に「あり・なし」だけでなく「できれば」という選択肢を加えることで、より柔軟な調整が可能になっています。

物件を表示する画面では、その物件が入力した条件にどの程度合致しているのかを示す「こだわり合致度」が表示されます。この数字を手がかりにすることで、大量の物件情報を見続けるのではなく、希望に合った物件の情報だけを見ることができるようになり、お部屋探しのプロセスが格段に効率的になります。

物件情報の表示イメージ

瀬良様「新学生が新生活をスタートするまでの限られた時間の中で、お部屋探しに使える時間はわずかです。そのわずかな時間の中でも、”このお部屋でいいんだ”という納得感を持って意思決定をしてほしい。それを実現するための仕掛けが、こだわり合致度なんです。」

既存のサービスに慣れているユーザを惹き込む一工夫

しかし、アプリのプロトタイプを用意して臨んだユーザ行動観察調査での反応は、芳しいものではありませんでした。

既存の物件情報サービスに慣れているユーザは、無意識のうちに「はやく物件情報を見たい」というモードに入ります。そのため、計画を立てるフェーズのインタラクションが煩わしく感じられてしまうのです。お部屋探し初心者にとっては計画を立てること自体の難易度が高いことも、新しいアプリの良さが伝わりにくい原因になっていました。

小城「既存サービスと大きく異なる体験設計を行う際は、スムーズにユーザに受け入れてもらうための工夫が必要です。今回の場合は、”物件閲覧モード”になっているユーザに診断コンテンツを提示することで、”計画を立てるモード”への転換を行っています。更に、答えやすい質問への回答結果から計画のたたき台を作ることで、検討フェーズへのオンボーディングもしているのです。」

診断コンテンツの質問イメージ

用意されている質問項目は、お部屋探し初心者にも比較的答えやすいものばかり。質問に回答していくと、それに対応してオートロック有無などの条件が設定されていきます。

診断結果を反映した条件設定のイメージ

このワンクッションが入ったことで、これまでのサービスに不満はないと言っていたユーザにも、「このアプリの方が使いやすいですね」と言ってもらえるものになりました。

リリース後の手応えあり、構想は次のステージへ

瀬良様「プロジェクトを振り返って印象的なのは、ビービットさんはよく話を聞いてくれたな、ということです。ユーザの話はもちろんですが、我々の話もよく聞いてくれて、それをもとに見事なサービスコンセプトを立て、実現させてくれたと感じています。コミュニケーションが空中戦になりかけたときには画面遷移をまとめた資料や画面設計書(案)を用意するなど、丁寧に意思疎通をしようとしてくれていることに安心感を感じていました。決して他人事ではなく、自分事として深く考え、粘り強く、時間や知識を惜しむことなくゴールへ導いてくれたと感じています。

その結果、完成した今回のアプリは、嬉しいことにダウンロード数といった定量成果だけでなく、とても評判が良いんです。ターゲットを定めて新しいメディアを作っていくという取り組みは社内においても注目され、また、ありがたいことに他のメディアからの取材も多く入りました。この春の引越しシーズンに大きな反響がありましたし、今後、社会人ひとり暮らし向けやファミリー向けなど、他のターゲットに対して、どんなサービスを提供するべきかの検討を始めています。

さらに、今回ユーザの生の声を聞いたことをきっかけに、お部屋探しにおける物件情報の提供サービスにとどまらず、ユーザの不動産店への来店、物件の内見、契約、引越し、新生活のスタートまでをトータルで支援サポートできるのではないか、ユーザが求めているコトへの価値提供の方法がまだまだたくさんあるのではないかという議論も始まりました。不動産業界全体の更なる発展に向け、アットホームらしくこれから何をすべきかを考える大きな転換点となったプロジェクトであったと思っています。」

 

今後の構想について語られるときの瀬良様の明るい表情が印象的でした。ビービットはこれからも、アットホーム様の価値提供のお取り組みを全力で支援させていただきます。

<アットホーム株式会社>
本社:〒144−0056
東京都大田区西六郷4-34-12
設立:1967年12月
資本金:1億円
代表者:代表取締役会長 松村 文衞
従業員数:1,457名(2019年2月末現在)
ウェブサイト:https://athome-inc.jp/

担当コンサルタント

  • 小城 崇(こしろ たかし)

    大阪大学大学院工学研究科修了後、2011年にビービット入社。コンサルタントとして、教育・保険・不動産・情報通信など様々な業界の企業を支援。近年はbeBitの方法論拡張・体系化にも力を割いている。