2008年03月03日

ラベリングが及ぼす影響 - 「予約」か「検索」か

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マネージャー
磐前 豪

リンク名やボタン名は、その先にどういった情報や機能が存在するのかをユーザに伝える重要な役割を果たします。
今回は、旅行サイトのケースを例に、ラベリング(名づけ)が与える影響を取り上げます。

■あるユーザビリティテスト(ユーザ行動観察調査)で起こった例
旅行サイトに訪れたユーザAは、宿泊先を探すという目的でサイトを訪れたにも関わらず、トップページにある、『宿泊予約』というリンクを見て、本当は正解であるこのリンクを意図的に避けてしまいました。

図1

同様の目的をもったユーザBは、別の旅行サイトのトップページの『ホテル・旅館検索』というリンク名を目にすると、即座にクリックしました。

図2

いずれも同種のページにリンクされており、ユーザが目的を達成するための正しい入口でした。
ユーザの行動を分けた要因は何でしょうか。主に次のような要因ではないかと考えられます。

宿泊先を探すユーザの行動フェーズは、

  1. 宿泊施設、宿泊プランの検討
  2. 宿泊施設、宿泊プランの選定
  3. 予約手続き

といった複数のフェーズに分けられます。
宿泊先の予約はネット上の手続きとしては比較的高額であり、旅行は家族、友人など他の人と相談しながら検討することが多いため、1回の訪問でこれらのフェーズが全て進むことは稀です。
検討初期の段階にいるユーザは最終的には宿泊予約を前提にしながらも、この時点では予約するという意識が無いため、「予約」というリンク名を避けてしまったのです。

では次に改善案を考えてみましょう。
先の考察が仮に正しいとして、

  • フェーズ1、フェーズ2のユーザには「検索」
  • フェーズ3のユーザには「予約」

のように、個別にリンクを用意すべきでしょうか。
また、リンク名を「宿泊検索・予約」といった、複数のフェーズのユーザを包含したリンク名にするのがよいでしょうか。
(※実際には、地図から検索する、日程から検索する、などの機能がある場合はそれも含め考慮しなければなりませんが、今回の論点ではないため割愛します)

このケースでは、上記の対応はいずれも最適ではないと考えます。
予約フェーズのユーザは、それ以前にサイト内で検索や詳細情報のチェック、比較といった行動を繰り返し行っており、検索の後に予約できることは了解しているからです。
“予約”という文言は、インターネット上の決済や手続きにまだ不慣れな初心者ユーザが課金されてしまうのではないかと捉える可能性があるため、 “予約”という文言を含めない、『ホテル・旅館検索』といったリンク名とするのが適切だと考えます。

あくまでもこれは、行動フェーズ等が分かれる旅行サイトの考察ですので、他のサービスで適用できるとは限らないことに留意する必要があります。
ラベリングはユーザの行動に大きく影響を及ぼしますが、適切なラベリングを行うには、サイトを訪れるユーザの心理や行動特性まで踏み込んで考え、決定する必要があるでしょう。

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