第14回 シンプル イズ ベスト?

シンプルであると使い勝手が良いと言われます。ここでのシンプルとは何を意味するのでしょうか。一般的に、シンプルであることは機能や情報が少ない状態を指します。

多機能による障害

先日ドラマの録画を試みたところ、予約方法がわからず途方にくれました。

何故こんなにビデオデッキは多機能なのでしょうか? 競合製品との差別化のためなのか、全てのユーザの要求を一台で満足させようと機能を多く盛り込んだためなのか、作り手側の意図は私にはわかりません。しかし、自分が使いこなせなかった事実だけは確かでした。

同様に、機能や情報が盛りだくさんのウェブサイトも多く見かけます。もちろん、目的毎に上手く整理された使い勝手が良いものもありますが、やはり自分の目的とする情報を見付けられなかったり、機能が多過ぎて何を使って良いのかわからなかったりします。

シンプルって何だろう?

そこで思い付く言葉が『シンプル イズ ベスト』です。一般的に、シンプルであると使い勝手が良いと言われています。ここでのシンプルとは何を意味するのでしょうか。普通に考えると、シンプルであることは機能や情報が少ない状態を指します。

実際にこの方向性で、使い勝手を上げることは可能です。例えば、Windows上で動くアプリケーションとHTMLで作成されたウェブサイトは、同等の機能を実現する場合でもHTMLで作成されたウェブサイトの方が使いやすいケースが多々あります。私の周りだけかもしれませんが、インターネットに常時接続環境での仕事中に、辞書アプリケーションよりも辞書サイトを愛用している方が少なからずいらっしゃいます。これは、HTMLは制約が多く、必然的に複雑な機能が実現し難いことが理由になると考えられます。

しかし、単純に機能や情報を減らすことは、かえって問題を引き起こす場合もあります。カセットデッキが備えるべき要件として、再生、録音、早送り、巻戻し、を定義した場合、再生、録音、早送りの3つだけ実装すれば要件は満たされます。それは、カセットのA面、B面を入れかえれば、早送りが巻戻しとして機能するからです。ここでは、巻戻し機能を削除したことによりシンプルさは上昇しましたが、使い勝手を上げてはいるわけではありません。

目的、ターゲットの絞込み

ウェブサイトの使い勝手を上げるためにシンプルさを追求するのであれば、機能や情報をいかに減らすかという観点ではなく、まずはサイトの目的やターゲットユーザをどこまで絞り込めるかに注力するべきです。

金融に興味のある全ての人を対象にしたウェブサイトの構築を想定すると、とてつもなく多くの機能や情報が必要になります。しかし、投資家向け、資産形成層向けなど、目的やターゲットを絞り込んでいくことで、実装する機能や情報を減らすことが出来ます。その結果として使い勝手を向上させ、より多くのユーザに使用してもらうことが可能になります。

制作者の立場になると、あれもこれもと欲が出て、どんどんサイトを複雑にしてしまいがちですが、最終的にどちらが多く成果を出せるのか、役に立つのか、しっかり考えた上で、捨てる勇気を持つべきではないでしょうか。