2011年02月21日

「プロトタイプ+アンケート」で、効果的に仮説検証する新手法!

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顔写真
ユーザビリティコンサルタント
酒巻 厚志

ビービットではオフィス内にユーザビリティラボを設け、日々様々なユーザを招いて実際にサイトを使ってもらう「ユーザ行動観察調査」を実施しています。

ユーザ行動観察調査の特徴は、仮説を具現化した「プロトタイプ」をユーザにぶつけることで、より深いインプットを得られることです。

今回は、そうしたプロトタイプを活用して定量的な検証を行う調査手法(プロトタイプ+アンケートによる量的調査)をご紹介します。

■どんな手法か?

「プロトタイプ+アンケート」による量的調査は、実際にプロトタイプを利用してもらい、利用してもらった後にアンケートに答えてもらう、という構成で組み立てを行うアンケート調査です。(図参照)

通常のインターネットのアンケート調査の途中にプロトタイプを閲覧してもらうように指示を入れることで、比較的簡単に実施することができます。

プロトタイプ+アンケートの流れ

■メリットは?

時間・地域制約がなく、大量のデータを集められることがメリットです。

同時に複数のユーザに使ってもらうことができるため時間的な制約がほぼ無くなり、また、インターネット上のアンケートを通じての調査となるため、地域的な制約も無視できるため、多くのユーザに調査を実施することができます。

また、「実際にプロトタイプを使ってもらう」という体験を間にはさむことで、単純なアンケートと比べて、より実態に即した回答が得られるようになります。

したがって、定性的な調査で仮説を立てた後にこの調査を行うことで、仮説に対して定量的な根拠を得ることができるのです。

■具体的にどのように使うのか

事前に立てた仮説に対し、次のような検証に用いることができます。

1.ウェブサイトのゴール・活用方法が正しいのかどうかの評価

ウェブサイトのコンセプトに則ったプロトタイプを利用してもらうことで、ウェブサイトで想定していたゴールを達成できる見込みがあるのかどうかの判断に使うことができます。

【例】「ウェブサイトを用いてガソリン自動車志向のユーザをエコカー志向に変えられるのではないか、という仮説があり、それは現実的に可能なのか」を検証する場合

【調査設計の例】

  • 実際に状況を設定して、エコカーのメリットを訴求するページを見てもらう。
  • その後、アンケートによって、どの程度シナリオが達成できたかを検証する。

【調査のポイント】

このとき、アンケートでは「プロトタイプを通じてこちらが狙った心理状態を達成できたか」を把握するための質問を設計することがポイントです。

例えば、

  • プロトタイプを見る前後それぞれで、「エコカーに対する興味の度合い」を5段階で回答してもらい、変化を見る
  • エコカーに対する印象を選択肢から選んでもらい、こちらが狙った印象を与えられているかを検証する。

などが考えられます。

「とりあえずやってみたけど、どう解釈していいのかわからない」となってしまうことを防ぐには、事前の仮説に基づいて、あらかじめ「こういう結果の場合には仮説が正しい/正しくない」という解釈がしっかりできるようにアンケートを設計することが大事です。(これは、一般的なアンケート調査も同じですが。)

2.ターゲット・シナリオ別のボリュームインパクトの評価

アンケート回答者をインターネット利用者の縮図と考えると、「プロトタイプ+アンケート」によって、世の中の各セグメントのボリュームを把握することもできます。

個々の仮説がうまくいくのか・いかないのかに加え、その仮説(シナリオ)毎にどれだけボリュームが見込めるのかを推測することができます。

例えば、ファミリーカーユーザ、スポーツカーユーザに対する別々のシナリオ仮説があり、定性調査ではいずれもうまくいきそうなことがわかった場合でも、それだけではどちらを優先すべきかは判断できません。

その場合、この手法を使うと、「自動車についてインターネットで調べるユーザのうち、スポーツカーユーザが7割、ファミリーカーユーザが3割」というように、各セグメントのボリュームを(擬似的にですが)把握することができます。そのため、より大きなインパクトが期待できるターゲットにフォーカスすることができるのです。


このように、「プロトタイプ+アンケート」という手法は

  • 定性調査でネックとなる、量的なデータを取ることができる
  • プロトタイプを使うことで、アンケートよりもリアルなデータが取れる

ことが最大のメリットと考えられます。

しかしながら、あくまでもアンケートの延長にある手法なので、「事前に立てた仮説の検証」には適していますが、この方法から初期仮説を立てることは難しいといえます。

初期仮説を作る際にはデプスインタビューやユーザ行動観察調査など、ユーザを深く理解する定性調査を用い、その次のステップの調査として検討することをおすすめします。

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