電話を減らす!サポートコンテンツのUX

カスタマーサポートをデジタルで効率的に行おうと、ウェブサイトにFAQなどを充実させたものの、あまり使われないという声を聞く。どうすれば顧客のトラブルを低コストですばやく解決できるだろうか?顧客心理をもとに問題の仮説と解決策を考える。

2016年5月11日

FAQがあるのになぜ電話がくるのか?

カスタマーサポートの対応は、顧客のロイヤルティを担保する重要な要素である。顧客に対して、自分のトラブルに真剣に取り合ってもらえなかったと感じさせてしまうと、不満をためこみ将来解約する可能性が高くなってしまう。そのため、効率的に顧客のトラブルを解決することが、顧客との関係を維持する重要なポイントとなっている。

その中でも多く行われているのは、デジタル上でのサポートである。多くのサービスでは、店舗やコールセンターのサポート負荷を減らすべく、ウェブサイト上に「故障や不具合に関する情報」や「よくある質問」などのサポートコンテンツを設けている。近年ではZendeskなど、カスタマーサポート機能を安価にパッケージ提供する企業もある。

しかし、未だに多くの店舗やコールセンターでは混雑状況が解決されていない。それも、難しい相談が集中しているわけではなく、ウェブサイトのサポートコンテンツを見れば自力で解決できるような質問が多い場合もある。あるサービスのコールセンターでは、たった20種類程度のテーマが全相談内容の8割を占め、さらにその半分がウェブサイトに解決方法が載っているものだったという。また、ある銀行でも、利用者の多くが住所変更などの簡単な手続きのために来店していた。

なぜFAQで簡単に解決できる場合でも、電話をしたり店舗に行ったりする顧客が多いのだろうか。顧客の心理・行動特性に注目して考えてみよう。

顧客にとっては、直接聞いた方が速い

プリンタなど利用中の製品が故障したとき、顧客は想定外のトラブルに焦っていることが多い。どんなにありふれたトラブルでも、その顧客にとっては重大な事態である。そして、一刻も早くトラブルを解決したいと考える。

このとき、サイト内のどこかにあるサポートコンテンツを探しにかかる顧客は多くはない。ほとんどの顧客が思う最速の方法は「直接聞くこと」である。サイト内で役に立つページを丹念に探すよりも、質問の答えを知っていそうな人に対して直接聞いた方が速いのである。具体的には、まわりの人に相談する、GoogleやYahooにトラブル内容を入力して直接検索する、そして電話や来店をするなどの方法が取られる。

なぜサポートコンテンツが有効に使われないのだろうか。最もよくある原因は、製品・サービスのページが既存顧客向けに作られていないことである。多くのページは、製品・サービスの販促のために、まだそれを手にしていない新規顧客向けのコンテンツが前面に出されている。このため、サポートコンテンツの入口の導線が目立っていなかったり、中の情報が顧客視点で整理されていなかったりすることが多い。

そのため顧客は、自分のトラブルに適した情報を発見することができず、「このウェブサイトでは解決できない」と考えて、直接聞く行動に移ってしまう。「サポートという名称でコンテンツを置いておけば後は勝手に見てくれるだろう」と淡い期待を抱くだけでは、顧客は活用してくれないのである。

WEB上のサポートコンテンツの作り方

これまでの説明を踏まえ、コールセンターに代わりデジタル上のサポートコンテンツをより使ってもらうためのアプローチをいくつか紹介する。最初のものほど重要度が高い。

1: 問い合わせの多い質問をすぐ解決させる

まずは、現在電話でどんな問い合わせが多いのかを正しく把握したうえで、その答えとなる質問のページを特に見つけやすくすることが最優先である。FAQの中でも特によく聞かれる質問については、トップページや製品ページから直接リンクを貼り、直接遷移できるようにするとよいだろう。ある企業では、問い合わせの多い質問についてトップページにリンクを載せたことで、コールセンターの対応コストを億単位で削減することに成功している。

下にある図1は、製品トップページに問い合わせの多いFAQを載せる方法の一例である。このようなページ設計にしたことで、コールセンターの対応コストを億単位で削減できた企業もある。

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図1:トップにFAQの導線を設置する例

2: FAQへの誘導を担保する

とはいえ、問い合わせの多いもの以外の質問についても、探せる状態にする必要がある。そのための前提として、FAQへの誘導を十分に行えているか確認した方がよい。顧客心理の説明でも触れたが、多くのサイトは新規顧客向けに作られており、FAQの存在にあまり気づかれていないことがある。トップページからFAQまでの導線に気づきやすいかどうか、家族や同僚などに見せて確かめてもらうとよい。

さらに、電話ではなくFAQを使うことのメリットを伝えることができるとよい。例えば、今は電話が混み合っているためWEB上で解決する方が速いなどと案内する手もある。このような案内であれば、どうしても電話で相談したいという場合でも、事前に待ち時間がわかるためストレスの軽減になる。また、図2のソニー損保のページのように、電話がつながりやすい時間帯を明示しておくのもよい。

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図2:ソニー損保の例

3: FAQの検索性を高める

FAQが膨大にある場合、その中から自分が求める1問を探すことには手間がかかる。そのような場合、自分のトラブルに関連の深い質問を一気に検索できれば、問題解決への手間が大きく省ける。FAQを横断検索できる導線を、一定優先して置くべきだろう。

さらに、GoogleやYahooで質問を直接検索する顧客も多いので、FAQページのSEOを強化できるとよい。具体的には、サイトのフッターにFAQへのリンクを入れる、質問と回答を平易な言葉遣いで書くなどの方法がある。

4: FAQを顧客視点で分類する

場合によっては、トラブルをうまく言葉にできず、どのような言葉で検索するべきかわからないこともある。そのようなとき、FAQがカテゴリごとに整理されていれば、質問を探しやすくなる。

このとき重要なのは、顧客にとって納得感のある分類になっているかどうかである。いくら体系立ててカテゴリを分類したとしても、顧客にとって自分の質問がどれに含まれるか判断が難しいと、カテゴリは使いにくいままとなってしまう。

顧客視点でカテゴリを作る方法の一つとして、カードソーティング調査がある。これは、コンテンツの内容が書かれたカードを用意し、それらを顧客なりの分類軸で分けてもらうというものである。詳しい実施方法は、ヤコブ・ニールセン氏の記事などが参考になるだろう。

カスタマーサポートで顧客との関係を深める

ここまでは、トラブルをすぐ解決できるようにするための基本的な工夫を紹介した。しかし、デジタル上でのカスタマーサポートの方法は、FAQという枠組みのみにとらわれるものではない。ここからは、導入に多少の手間がかかるものの、トラブル解決だけではなく顧客のロイヤルティを高めることにもつながりうる手法を紹介する。

チャットによるカスタマーサポート

電話の代わりにチャットを使った対応は、カスタマーサポートに有効な手段の一つである。顧客にとっては、質問内容をそのまま入力するだけでオペレーターに答えてもらえるため、情報を探す手間がほぼなくなる。さらに企業側としても、1人のオペレーターで複数の顧客に対応できるため、カスタマーサポートのコスト削減にもつながりやすい。最近では、カスタマーサポート用のチャットツールや、Facebook MessengerやLINEなどのSNSを利用したチャットサポートも利用可能であり、以前よりも低コストで導入できるようになっている。

ただしチャットの場合、リアルタイムでのやり取りができるものの、互いの感情やニュアンスが伝わりにくい。また、複数の顧客に同時に対応しなければならない場合もあるため、オペレーターには電話の場合以上のコミュニケーションスキルが求められる。

顧客同士で問題を解決しあうフォーラム

顧客用のフォーラムを作り、顧客同士で問題を解決してもらうという方法もある。ライト顧客から寄せられたトラブルや質問に、コア顧客が中心となって答えていくというシステムである。回答を重ねていくと、何らかの特典が得られることが多い。

例えば、Googleのプロダクトフォーラムでは、的確な回答を続けていくと「注目顧客ー」「トップレベル顧客ー」とランクが上がっていく。トップレベル顧客ーになると、Google社員と交流できる特別イベントや、最新プロダクトのβテストなどに参加できる権利が与えられる。

この方法では、企業側の役割は不適切な投稿の監視や最低限のモデレートなどに絞られ、カスタマーサポートのコストを大幅に減らすことができる。さらに、コア顧客に対してサービスへの貢献意識や自己承認を与えることができ、ロイヤルティを高める効果もある。また、それに触発されたライト顧客が熱心にサービスを利用するようになることも期待できるだろう。

ただし、この方法を行うためには入念な準備が必要となる。まず、豊富な知識を持ち、熱意をもって利用するコア顧客がいる状態でなければならない。また、彼らの承認欲求を満たす仕組みを作ったり、初期の頃は活発な投稿が起こるようなモデレートを行ったりと、運営側でも配慮が必要になる。しかし、安定して利用されるようになれば、運営が大きな労力をかけずとも、顧客同士で問題が自然と解決される仕組みが出来上がるだろう。

デジタルと人間のサポートを連携させる

ここまで、デジタル上のサポートコンテンツを顧客に有効活用してもらう方法を解説してきた。しかし、必ずしもすべてのサポートをデジタルで行うべきというわけではない。例えば、料金プランの相談やローンの申し込みなど、顧客をコンサルティングする要素が含まれる相談は、人が応対する方が効率的に解決できる。顧客としても、対面の方が不安を解消できるという場合もある。

長期的に目指すべきなのは、相談のレベルに応じてデジタルと人間のサポートを上手に組みあわせることである。難しい相談については、人間が丁寧にヒアリングを行って解決に導く。そして、今後の同様のトラブルを簡単に防ぐ手段がある場合は、デジタル上のサポートコンテンツを案内し、顧客が次回以降に自力で解決できるよう促すとよいだろう。

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※本コラムに関連して以下のような課題・プロジェクトに対応可能です。

・サイトにサポートコンテンツを設計したい
・膨大なFAQを顧客視点で整理したい

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執筆者:宮坂佑
(エグゼクティブマネージャ/エバンジェリスト)
一橋大学法学部を卒業後、ビービット入社。金融、電機メーカー、メディア等の大手企業・ネット先進企業のウェブサイト改善・再構築に関するコンサルティングプロジェクトを多数手がけ、クライアントの成果向上に貢献。累計1000人超の顧客行動観察調査の経験をもとに、近年は講演や執筆活動も実施。
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執筆者:大谷直也
(コンサルタント)
東京大学経済学部を卒業後、ビービット入社。人材、メディア、金融機関等のウェブサイト・デジタルサービス改善プロジェクトに携わった後、現在はテクノロジーと顧客中心設計に関する調査・研究活動に従事。

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実績

  • リクルートライフスタイル

    会計業務を支える無料クラウドレジアプリ「Airレジ」のユーザを深く理解するために、実際の店舗における利用状況調査および検討状況下におけるユーザ行動観察調査を実施。

  • 日本経済新聞社(「日本経済新聞 for iPad」)

    iPadアプリ「日本経済新聞 for iPad」の開発に際し、モックアップを利用したユーザ行動観察調査を実施。そこから得られた改善点を実際の開発に反映した。

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