データ活用の常識を変える、UX改善の新手法とは ー 宣伝会議インターネット・マーケティング・フォーラム2017講演レポート

宣伝会議インターネット・マーケティング・フォーラム2017(6/6)で、弊社エグゼクティブマネージャ/エバンジェリスト宮坂が『データ活用の常識が変わる!売上40%アップを実現したUX改善の新手法「デジタル行動観察」』と題して講演しました。本レポートでは当日の内容をご紹介します。

2017年6月13日

今回、宮坂が講演したテーマは、デジタルマーケティングにおける「UX改善につながるデータ活用」でした。講演の冒頭、いまデータ活用がなぜ重要になってきているのか、その背景をビジネスのデジタル化という潮流の中で解説しました。

デジタル化は、「モノ」から「コト」への潮流を促進します。物理的な「モノ」ではなく、デジタルを介してコミュケーションできるようになり、デジタルを介した体験を作ることができる企業が、今後の勝者になってきます

デジタライゼーションが進む現在、企業も変化を余儀なくされています。その象徴的な事例としてタイヤメーカーのミシュラン(※参考1)を挙げながら、商品・サービス起点の「モノ」を売るビジネスモデルから、顧客のストーリー起点の「コト」を売るビジネスモデルへの転換がはじまっていると話します。

ミシュランの事例はデジタルによるビジネスモデル自体のトランスフォーメーションですが、デジタルマーケティングへの示唆にも富んでいます。

すなわち、デジタルマーケティングの成功も「品質の高い顧客体験」にかかっているということです。そして、「品質の高い顧客体験」を作るためには、以下の2点が重要になってきます:

  • 顧客起点で、体験を企画・改善する
  • 顧客行動をデータとして取得できることを活かし、顧客体験の改善に活かす

このような背景のもと、顧客体験(UX)の改善にデータをどのように活かすべきかについて議論を深めていきました。

※1
経済産業省:デジタル競争時代における産業転換(http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shin_sangyoukouzou/pdf/003_04_00.pdf)

データは取れているのに、実は施策の効果がよく分からないという悩み

デジタルマーケティングで強調されることの一つに、「データが取れるから、施策の効果が可視化される」ということがあります。ウェブサイトへのアクセス、ウェブ広告やソーシャルメディアでの接触、メールの配信、動画や記事コンテンツの閲覧など、データから効果検証は可能で、最適化に活かせると言われています。

しかし、一方で
「PV、クリック率、CV率、CV数などの数値をみているが、施策が効いてCVしているのかどうか分からない・・・」
「サイトに動画や記事を作って置いてみたが、認知やサービス理解に役立っているのか本当は分からない」
という意外な声をデジタルマーケティング担当者様からよく伺います。

データは取れているのに、よく分からないとはどういうことでしょうか?講演ではよくある失敗例を挙げながら、その原因を紹介しました。

事例:データを集計して相関は見るが、因果は見ていない

講演では、あるECサイトの事例を紹介しました。このECサイトでは、商材が少額であるため、継続的に商品を購入するロイヤル顧客を増やすことが喫緊の課題となっており、購入データなどをもとに定量分析を大規模に実施していました。

その定量分析によると、購入回数と継続率の間に強い相関があることが分かります。具体的には、このECサイトで商品を5回購入すると、その後の継続率が明確に高まるというものでした。そこでこの企業では、5回目の購入を促すために、既存顧客向けのキャンペーンを実施します。

キャンペーンの結果、確かに5回目の購入はされていました。しかし、その後の購入を追ってみると、キャンペーンで5回目の購入を行った顧客の継続率は全く向上していませんでした。

過去のデータからは購入回数と継続率やLTVに相関はあるものの、なぜ顧客が5回買うと継続率が上がるのかは分からなかったことが失敗の原因です

さきほどの「施策の本当の効果が分からない」というのも原因は同じです。施策を行ってCVは上がったものの、施策が顧客にどのように影響を与えCVが増えたのかという因果が、実はデジタルマーケティングでもよく分からないことが多いのです。

定量分析という従来のデータの見方を疑う

企業におけるデータの定量分析の課題は以前から指摘されてきました。しかし、上記のような事例から分かるように、問題の本質は集計や分析のスキルではなく、数値だけから顧客を理解することの難しさだと指摘します。

そこで、宮坂はこの課題を解決しにいくのではなく、データの見方自体を新しく変えるべきだと提案します。「データを集計して、数値で分析する」という常識を疑い、データの新しい見方を提案しました。

今までの常識は、貯まっているデータを色々な角度でスライスして、何か発見を得るというものでした。
しかし、そうではなく、データを顧客一人ひとりに分解して、時系列で観ていくという手法を提案します

顧客一人ひとりのカスタマージャーニーを追体験する、新手法「デジタル行動観察」

デジタル行動観察は、ウェブ上の行動ログで活用して一人ひとりのカスタマージャーニーを追体験し、顧客体験(UX)を見える化する手法です。

具体的には、いつ、どのデバイスで、どこから流入し、どのようにウェブサイトを閲覧したのかという行動ログを、顧客一人ひとりの時系列に沿って観ていきます。その個人のカスタマージャーニーを追体験しながら、顧客の状況や心理、ニーズを解釈していきます。

ただし、顧客一人ひとりのカスタマージャーニーを追体験する際のポイントがあります。それは、その行動を取っているのは誰かという属性情報も、一緒に見るということです。例えば、性別・年齢・住所などの情報に加え、ECサイトなどであれば、それまでの購入履歴なども合わせて見ます。そうすることで、その顧客の体験により近づくことができます。

デジタル行動観察の実施ステップは、以下の4つからなります:

  1. 顧客の抽出
    誰の何の行動を観察するのかを決める。具体的には顧客セグメントや属性情報で、観察したい顧客IDを絞り込む。
  2. 一人ひとりのデータを観る
    絞り込んだ顧客の行動を一人ひとり、時系列に沿って観察する。この際、顧客属性などの情報も一緒に見る。
  3. 解釈
    行動から状況や文脈を捉え、ニーズ・心理を読み解く。例えば、CVやリピート購入などに至る理由を考える。
  4. 定量で裏付け
    CVやリピート購入の鍵になる行動をどのくらいの顧客が行っているのかを定量的に裏付ける。

一人ひとりの行動をデータで観察することで追体験し、そこで得られた発見を、さらにデータを使って定量的に検証する。それがデジタル行動観察のプロセスです。

講演ではデジタル行動観察の有効性を示すため、実際の企業で実践された事例を2つ解説しました。一つはカラーコンタクトのECサイト、もう一つはコスメECサイトの事例です。ここでは、後者の事例をご紹介します。

事例:売上40%アップ!顧客行動を捉えた、コスメECサイト改善

このコスメECサイトでは今年の3月末に新商品を発売したため、その商品を知らせるためキャンペーンページを作り、トップページのファーストビューに置いたバナーから誘導していました。

しかし、このように大々的に告知していたのですが、思ったほどは新商品の売上が伸びませんでした。そこで、ご担当者様は、新商品を購入した顧客の行動データを抽出して、アクセスが多いスマホサイトでの行動を観察することにしました。

十数人の行動を一人ひとり追体験するうちに、ご担当者様は顧客がある共通の行動をしていることに気づきます。

気づけば当たり前だが、思いもよらない顧客行動

多くの購入者は、スマホでトップページから流入してもバナーを押さずに、すぐにハンバーガーメニュー(※2)から商品カテゴリーのページに行き、さらに商品詳細ページを見に行きます。そして、その商品は、前回の購入した商品でした。

※2
モバイル端末のブラウザ等でメニュー表示を表すアイコンの一つ。3本線の見た目からハンバーガーメニューと言われる。

つまり、顧客はいつも購入している商品を、いつものように見るという行動を取っていたので、トップページに置いたバナーには気付いていませんでした。実は、新商品を購入した人は、いつも購入している商品をカートに入れたり、買わずにトップページに戻ったりした後に、たまたまバナーを見つけた人だったのです。

これは、目的を持った顧客の「いつも行っている行動」を変えるのは難しいことを意味しています。「いつも行っている行動」の中でバナーを見られる自然な文脈を発見しなければ、目立つ位置に置いたとしても、バナーを見てはくれません。

そこで、ご担当者様は、スマホユーザがいつもの商品を見終わった後であれば、新商品も見てくれるのではと考え、商品詳細ページの下部に新商品バナーを置くことにしました。この改善は成功し、改善前の週と比べて新商品の売上が40%アップしました。

これはちょっとした工夫で打ち手を変えただけで、すぐに成果が出た事例です。しかし、もともと捉えていた顧客の行動が実態とは違い、その実態が分かったからこそ、有効な施策が打てたという典型です

日々行っている施策の改善も、顧客体験が見えると見えないでは成果が大きく違ってくるということを、この事例を通じて解説しました。

まとめ

最後にお伝えしたいメッセージを以下の3点にまとめ、講演を終了しました:

・相関ではなく、因果を捉える
データを集計した数値だけを見るのではなく、その数値が上がった・下がった理由を顧客体験に基づいて捉えなくてはならない。

・データを集計せず、一人ひとりに分解して観察する
因果を理解するには、データを顧客一人ひとりの行動に分解して、カスタマージャーニーを追体験することが有効である。

・顧客行動を追体験し、解釈力をつける
より多くの顧客行動を観て、その行動がどのような理由・心理に基づいているのかを把握する「解釈力」をつける必要がある。

●顧客一人ひとりのカスタマージャーニーを追体験できる、デジタル行動観察ツール「ユーザグラム」のご紹介

講演では、ビービットのノウハウをもとに開発したデジタル行動観察ツール「ユーザグラム」を紹介しました。

デジタル行動観察ツール「ユーザグラム」

・デバイスをまたいだ行動を把握できる
・行動ベースでの効果検証ができる
・LTVが高い、ロイヤリティが高いなど、特定顧客だけを抽出できる
・発見したインサイトを定量的に裏付けられる

ユーザグラムの機能や活用シーン、導入実績などを知りたい方は、こちらから詳細なサービス資料をダウンロードいただけます。


ユーザグラムの資料ダウンロード

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講演:宮坂 祐
(エグゼクティブマネージャ/エバンジェリスト)
一橋大学法学部卒業後、2002年にビービット入社。コンサルタントとして、メディア、金融、通信、電機メーカー、 メディア等のウェブ戦略立案・ウェブサイト成果向上プロジェクトを数多く実施。2013年からエバンジェリストとして、CX/UXをテーマに多くのマーケティングイベントに登壇。2016年に金融財政事情研究会より「顧客を観よ-金融デジタルマーケティングの新標準」を刊行。グロービス講師。
 
文:薮 義郎
(ソフトウェアサービス マーケティング担当)