成果を出すリニューアルは、コンバージョンの源泉から

サイトリニューアルでは、現状把握を行ってから、改善方針を作成するというプロセスが重要ですが、現状把握における改善仮説立案が難しいのが実情です。本コラムでは、初期段階で仮説を立てるための方法をご紹介します。

2013年2月 4日

リニューアル時にありがちな落とし穴

「せっかくリニューアルしたものの、思うように数字が伸びなかった」、という経験はありませんか。

成果を出すためには、ユーザや競合/自社サイトなどについての現状把握をきちんと行い、適切な改善方針を作成するというプロセスを進めることが重要ですが、実行は簡単ではありません。

実は、そこには多くの方が陥りがちな落とし穴があるからです。

■落とし穴 その一:「仮説」がないまま調査・分析に入ってしまう

現状把握のための調査・分析(ログ解析、定量アンケート、グループインタビューなど)を実施すれば有益なインプットを得られるか、というと必ずしもそうではありません。

何の仮説もなく調査だけ実施してしまうと、見るべきポイントが明確ではないため、得られる分析もぼやけたものになりがちです。結果として、膨大なデータを前に時間を浪費するか、特に改善に結びつかない一般的な結果しか出て来なかった、といった事態になりかねません。 「やれば何か発見があるだろう」という甘い期待は捨てましょう。

■落とし穴 そのニ:組織のしがらみや自分の好みに流される

関係部署間での政治的な駆け引きや、「この方がかっこいい」などの自分自身の好みは、改善案を作成する上で方向性を歪めてしまう要因となります。「ユーザ」や「サイトの現状」から離れたところで議論・判断を行ってしまうと、リニューアルの成果は限定的なものになりがちです。

現状把握はコンバージョン(CV)の源泉チェックから

上記のような落とし穴にはまらないためには、リニューアルの早い段階で現状把握を行い、初期仮説を持つことが鍵となります。

その際に有効なのが「資料請求」、「申し込み」、「購入」といったサイトごとのゴール=コンバージョン(以下CV)の源泉のチェックです。このチェックは以下の2つの観点から行うことをおすすめします。

  1. 「どの経路でどのくらいのCVが発生しているか?」という流入・サイトに関するチェック
  2. 「どのようなユーザがCVしているか?」というユーザ構成に関するチェック

上記をチェックすることで、実際の調査に入る前に、粗い初期仮説を得る事ができます。

流入に関するチェック - どの経路からどのくらいのCVが発生しているか?

自然検索、バナーなどの流入経路ごとに流入数やCV数を整理します。アクセスログ解析ツールや効果測定ツールを用いいて数値を集計し、下図のようにまとめてみると全体像が分かりやすいでしょう。

■ポイント1:コミュニケーション単位で評価する

このチェックでは、現在CVを稼いでいる主要な流入経路と流入先(入り口ページ)をざっくりと把握することを目的としています。それにより、「流入経路」、「流入先(入り口ページ)」とCVを併せてみられるため、経路ごとのコミュニケーション(接客)が成功しているのか、失敗しているのか、というあたりを付けることができます。流入経路は、上図のようにフロー図を用いてビジュアル的に整理する他に、下図のように表を用いてもよいでしょう。

また、もっと簡単に、流入経路ごとにトップページからの流入と下位ページの流入のCVRを比較するだけでも、現行サイトに課題がありそうかどうか、のあたりをつけることができます。

■ポイント2:全体像を把握する

流入経路は現在行っているものだけではなく「他社が実施しているもの」や「有効だと思うがまだ実施していないもの」の経路も記載しておくことをおすすめします。改善方針を作成する際、どうしても現行の施策の枠組にとらわれがちになりますが、先に選択可能な「打ち手」を洗い出しておくと、より良い施策に到達しやすくなります。

ユーザ構成に関するチェック - どのようなユーザがCVしているのか?

流入経路と併せて、CVしているユーザの属性(初回訪問/再訪や非会員/会員など)ごとの指名検索の割合を確認しておきましょう。

CVの内訳は初回訪問/再訪(非会員/会員など)のいずれが多いか、来訪時の検索キーワードは「指名系」か「非指名系」が多いのか、が分かるとリニューアルで検討すべき範囲も見えてきます。

この結果を元に検討するべきポイントは大きく2つあります。

■ポイント1:現在の訪問者だけで目標が達成可能かを検討する

CVしているユーザの属性(新規/既存)や指名検索の比率が把握できたら、次はリニューアルの数値目標達成の可能性について見通しを立ててみましょう。

例えば以下のようなサイトで、現在訪問しているユーザから見通しを立ててみましょう。

例: 格安航空チケット販売サイト

商材が格安航空券なので、クロスセル・アップセルによる、1人あたりの販売単価向上は難しいということを前提にします。

訪問者の9割を占める既存会員は、CV率がすでに80%とかなり高く、ここからの改善は厳しそうです(わかりやすくするために極端な例にしてあります)。一方、非会員領域はCVRが10%とまだ低く改善の余地はありそうですが、仮に非会員のCVRが100%になっても、売り上げは12%程度しか向上しません。目標とする売上2倍を達成するためには、現在の訪問者だけを対象とした施策だけでは不十分であることが分かります。

ここまで極端な例ではなくとも、このような視点で見てみることで、サイト内の改善だけで目標達成できそうかどうか、のざっくりした肌感はつかむことが可能です。

併せて、現在サイトを訪問しているユーザの「質」もチェックしておくことが重要です。以下の例をご覧ください。

例: PC通販サイト

一見すると、「初回ユーザ」で「非指名」系キーワードで流入するケースは、他と比較してセッション数が多く、CVRの低いため、うまくコミュニケーションを改善できれば成果へのインパクトが大きそうです。

ただ、流入キーワードの内容まで見てみると、実は流入の多くが販売商品の購買につながりにくいキーワードであるということが分かります。これらのユーザの大多数がCVに寄与しないと想定されるため、そこに向けた改善施策を行なっても数値目標の達成は期待できません。

単純に数値の大きさだけではなく、ユーザの質(商品との親和性)の観点からもチェックを行う必要があります。

上記2例のような極端な数値でなくても、ある程度の傾向がつかめれば目標数値の達成見込みは把握できるため、実施することをおすすめします。

■ポイント2:対応内容の変更も検討する

親和性の高いユーザの来訪数が十分ではない場合や、CVRの伸びしろが残っていないような場合は、サイト内の改善だけでの大幅な成果向上は望めません。サイト内だけではなく、流入などサイト外の施策も併せて検討する必要があります。

また、既に流入に十分な手を打っている、という場合であれば、その前の「認知獲得」の見直しも検討対象となります。特に、非指名系の流入が多く、ユーザの商品認知、マインドシェアが低いような場合では、認知施策も検討の余地があります。

例えば、全国区の商品の場合に限られますが、TVCM、特に単価の安い地方CM等で費用対効果が良いものがあれば、獲得効率の悪い流入施策からWeb以前の施策に予算を振り分けるということも考えられます。

CVの現状と目標数値によっては、サイト周辺だけではなく、Web外の領域も含めて予算などのリソース配分を適切に行う必要があるでしょう。

また、認知も含め、施策をやりきっている、という場合であれば、「CV数の増加」というリニューアルの目標自体が適切でないケースもあります。サイトでの「獲得数」向上を目指すフェーズは過ぎており、「CVの質」を問うフェーズに来ているケースです。このフェーズでは、購入額、購入頻度や解約率などから、収益に貢献するユーザを特定し、そのユーザに向けてコミュニケーションを磨いていく、といった異なるアプローチが必要となります。

このように、サイトやマーケティングのフェーズによって、対象とすべき領域、検討するべき内容、成果目標は異なります。サイトのリニューアルありきで考えてしまうと、どうしても意識がサイト周辺に向きがちになりますが、ビジネスインパクトを最大化するためには、Web外での施策やCV後のユーザ把握等も視野に入れておくべきでしょう。

CVするユーザの属性把握を実施することで、早い段階からあたりを付けることができるため、適切な対応をとりやすくなります。リニューアルにあたっては実施することをおすすめします。

この後の流れ

上記のチェックを行うと、多くの場合、現行サイトで発生していると想定される課題、検討するべき事項が浮かび上がってきます。それらの仮説をもっ、てサイト内のアクセスログや各種広告のレポートなどをご確認頂くと、現在の課題について精度の高い初期仮説を得る事ができます。

現行サイトの現状把握が一通り終われば、次はユーザ理解のフェーズです。今後のCV数向上の鍵を握ると考えられるユーザについて、ユーザ行動観察調査、インタビュー調査、アンケート調査などを実施します。その際も上記の仮説があることで、よりCVに近い箇所にフォーカスしたインプットを得ることが可能となります。

なお、ユーザ理解の情報としては、一次情報に勝るものはありません。加工後のデータでは汲み取ることのできないインプットを得る事ができるため、出来る限り直接ユーザと接触できる調査を実施しましょう。

サイト訪問時のユーザの反応を見るならユーザ行動観察調査が一番良いと考えられますが、期間や費用面で難しい場合は、ユーザへの電話ヒアリングをおすすめします。Webアンケートでターゲットユーザをスクリーニングした後、インタビュー会場に来てもらう代わりに電話でヒアリングを行う形式です。自社サイト内の行動を把握することはできませんが、ユーザニーズ及びざっくりした検討プロセスの理解を行う上では有効です。

まとめ

リニューアルに先立ち現状把握を行う場合は、CVの源泉のチェックを行う事が有効です。目的は大きく以下の2つです

  1. CVが発生している経路を洗い出し、CVへの影響が大きそうな課題を特定する。
  2. CVしているユーザの属性を把握し、数値目標を達成するために検討対象とするべき範囲のあたりをつける。
執筆者:柳本 陽平
株式会社ビービット アクティングマネージャ
慶應義塾大学を卒業後、システム会社勤務を経て、ビービット入社。大手製造業、ネット専業の金融機関、人材系企業等のサイトリニューアル・改善のコンサルティングプロジェクトを数多く手がけ、その中で成果を創出した知見をユーザ中心の方法論として整備している。

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デジタルマーケティング改善

実績

  • ベネッセコーポレーション

    外部環境の変化に伴い、既存のコミュニケーションでは新規会員獲得が難しくなっていた。これまでとは違うユーザのニーズを捉えたコミュニケーション方針を策定し、ウェブサイト経由の申し込み数108%を達成。

  • 旭化成ホームプロダクツ

    ウェブサイトを製品の魅力を訴求する新たなメディアとして活用するためのリニューアルを実施。豊富なコンテンツ力を活かしターゲットユーザを商品ページへ誘導し、商品詳細ページにて他社商品との違いや独自のブランド力を訴求することに成功。

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