第48回 強力なビジネスツールとなるグローバルサイトの要点【前編】

複数の国や地域に現地法人・事務所を展開している企業のグローバルサイトのあり方や展開方法についてご紹介します。

2009年10月29日

本コラムのサマリ

  • 海外向けのサイトは、単に「日本語サイトをコンパクト化して外国語に訳したサイト」であってはならない。
  • 製品・サービスが国や地域ごとに異なる場合は、各国(または地域)のサイトを束ねる統括サイトを設ける構造とすべきである。
  • 各国サイトの言語は原則、現地語。英語、日本語等の言語も合わせて用意するかどうかは、ターゲットとするユーザ、ウェブサイト制作・運用負荷を勘案し判断する。
  • 各国のサイトの統一感は、ヘッダ・フッタ・ナビゲーションなど構造に関わる最低限の要素や、トーン&マナーまでに留め、独自性の余地を残す。

※本コラムの「グローバルサイト」とは、海外現地法人や事務所を展開する企業における各国および全体を統括するサイトを指します。

海外向けに製品・サービスを訴求するグローバルサイトは最適化されていますか?

少子高齢化によって国内市場の成長が鈍化し、日本企業の外需依存度が高まっています(※)。しかしグローバルにビジネスを展開する企業であっても、海外事業を扱う部署や現地法人へ配分するリソースは潤沢でないことも多く、また外国人向けのビジネスとなれば「国内に比べて会社の知名度がない」という不利な事情があるかもしれません。

※通商白書2008
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2008/2008honbun/html/i2210000.html

限られたリソースで会社知名度が劣る海外においては、国内とウェブサイトの位置づけや果たすべき役割が異なってきます。

それだけに、海外に向けたビジネスツールとしてウェブサイトを生かしていくためには、単に『日本語サイトをコンパクト化して外国語に訳したサイト』を作るだけでは成果をあげることは困難でしょう。
それどころか、サイトを利用するユーザに適した内容になっていなければ、企業イメージを損なうなど、マイナスに働く可能性さえあるのです。

図表1:日本語サイトの単なる翻訳では不十分

本コラムでは、複数の国や地域に現地法人・事務所を展開している企業のグローバルサイトのあり方や展開方法についてご紹介します。

【ポイント1】 グローバルサイトの構成、言語、各国サイトの統一感といった枠組みをどうするか?

多くの人にとって、グローバルサイトの制作は初めての取り組みとなることから、「全体のサイト構造は?」「何語でサイトを作ればいいの?」など、どうして良いか分からないという様々な問題に直面しがちです。
これらはビジネス上の利用ユーザや自社の製品・サービスの特性を考えることで導出されますので、焦らず検討をしていきましょう。

1. 各国サイトを「統括する」サイトは必要か?

ユーザが製品やサービスの情報を求めてGoogleやYahooで検索した場合は、そのユーザが使う言語(地域)のサイトが基本的に表示されます(日本人が国内で普通にDELLを検索をすれば、日本のDELLサイトが表示される)。よって、各国(または地域)の個別サイトが必要であることは言うまでもありません。

ここで論点となるのは、各国のサイトを束ねる統括サイトを持つかどうかという点です。

図表2:各国(または地域)の統括サイトを持つ構造と持たない構造

統括サイトを持つべきか否かは、提供している製品・サービスが国や地域で異なるかどうかがポイントとなります。

■製品・サービスが国(または地域)ごとに異なる場合

提供している製品・サービスのラインナップやサービス内容、料金体系などが国や地域ごとに異なる場合は、ユーザに製品・サービスを利用する国(または地域)のサイトを閲覧してもらう必要があります。
ユーザにとっては、自分が使う製品や受けられるサービスについての情報が重要ですので、地域によってサービスが異なる場合、異なる地域の情報はあまり役に立ちません。

ここで考慮が必要なのは、アメリカ以外で製品・サービスを利用しようと考えるユーザが、アメリカ地域用のサイトに来訪してしまう可能性があるという点です。

いわゆるドットコムドメイン(.com)は、商用サイトのドメインですが、アメリカにある企業の多くは(アメリカ以外の国に本社がある企業のアメリカ現地法人も含め)、ドットコムドメインを使用しています。

例えば、イギリスのユーザが企業名で検索すると、「○○○.uk」の他に、「○○○.com」が場合によって検索結果に表示されます。またユーザによっては、グローバル企業のサイトを見たいと思った際、URL欄に「http://www.○○○.com」と直接入力するため、それらの行動も考慮すると、アメリカ以外のユーザがドットコムドメインサイトに来訪することは一定数あると考えてよいでしょう。

そのため、「製品・サービスの情報を求めるユーザに対して、対象地域サイトへ適切に振り分ける」という各国(日本サイトを含む)・地域サイトを束ねる統括サイト(ドットコム(.com)サイト)を持つ必要が生じるのです。

図表3:製品・サービスが国や地域ごとに異なる場合のグローバルサイト基本構造
統括サイトの例

なお、アメリカ国内から検索を行った場合に、アメリカ地域用サイトと統括サイトが表示されるとユーザが困惑してしまいます。よりニーズに合致するサイトはアメリカ地域用サイトと考えられるため、「アメリカ国内から検索された場合にはIP情報で判別して統括サイトは表示しない」という対策をとることが望ましいでしょう(これは、アメリカ地域用サイトから統括サイトへの導線が確保されていることが前提です)。

■製品・サービスが国(または地域)で同一性が高い場合

これに対して、製品・サービスが国や地域で同一性が高い場合は、ドットコムドメインのサイトは、「本社サイト(日本企業であれば日本地域へのマーケティング目的も持ったサイト)の英語版」とすることが可能です。

各国(または地域)のサイトのコンテンツと日本本社サイトのコンテンツは共通性が高いため、日本本社サイトの情報を見た場合でも、ユーザの「企業やサービス内容を知りたい」というニーズに対しても適した情報を提供できることになります。

通信業など、世界に対して基本的に同じサービスを提供しているような場合は、本社サイトの内容をベースとし、各地域サイトへの振り分け導線を追加したドットコムサイトを持てばよいことになります(日本用英語版とドットコムドメインサイトを別個に持つ必要性は低いといえます)。

各国のサイトは、国別に異なるプロモーションやニュース情報等を中心のコンテンツとし、製品・サービス情報は日本サイトのコンテンツと共通の内容を持つ形となります。
コストを重視すれば、共通の内容は各国サイト側では保持しない対応もありますが、アメリカなどはサイトのコンテンツ量がサイト品質として重視される場合もあるため、その点は考慮が必要です。

図表4:製品・サービスが国や地域で同一性が高い場合のグローバルサイト基本構造

2. 各国(または地域)サイトにおける提供言語は何語にすべきか?

次に、各国(または地域)のサイトは何語で作成すれば良いでしょうか?

基本的には、以下の言語が候補となるでしょう。

  1. 現地語(国や地域の公用語)
  2. 英語
  3. 日本語

自動車や不動産、家電製品のように、地域内で製品・サービスが利用されるような場合には、「その地域内のユーザ」が当然多くなります。そのため、言語は英語ではなく、現地語が重要となります。

ただ、日本企業がアメリカに進出するようなケースでは、日本人がアメリカのサイトを見て物品や不動産の購入、検討を進めることは十分考えられるでしょう。
現地語以外の言語の必要性については、ターゲットとするユーザやウェブサイト制作・運用負荷を勘案しつつ判断していく形になります。

3. 各国サイトの統一性について

複数の国や地域にサイトを持つ場合、どこまで構造やトーン&マナーを合わせるべきか、という問題も発生します。

これには、ユーザにとっての使いやすさ、企業サイドの制作・運用コスト、企業としてのブランディングの統一性の3点のバランスを考えることになります。

結論としては、「ビジネス上主要なマーケットで行ったユーザ行動観察調査(ユーザビリティテスト)の結果から、ベースとなるサイト構造と、トーン&マナーを規定し、他の地域は、必要な範囲で個別にカスタマイズする」という対応が良いと考えられます。

例えば、ヘッダ、フッタやナビゲーション位置、主なコンテンツ群、製品・サービスの紹介ページの内容などは、ある程度統一される形になります。

■理由1 ユーザビリティの観点

ユーザをゴールに導くことにフォーカスすれば、人(文化)ごとに習慣などが変わるため地域ごとにサイトを個別に最適化をすることがベストとも言えますが、製品・サービスをサイト内で探索する行動や、購買までの基本的な意思決定プロセス、必要な情報は国籍や地域で大きくは変わらないことが、弊社が北米、アジア、ヨーロッパなど全世界12か国の国籍のユーザを対象に実施したユーザ行動観察調査(ユーザビリティテスト)でも分かっています。

※ヤコブニールセン博士の『eコマース・ユーザビリティガイドライン』では、アメリカ人とデンマーク人について、ECサイトの使い方、情報の検索方法、意思決定プロセスが異ならないという内容が記述されています。

とはいえ、国(または地域)により、扱っているサービスやマーケティングアプローチ、表記法、色・デザインに対する捉え方等が異なるため、独自性に配慮し、幅を持たせる必要はあります。

例えば、アメリカなどでは「贈る」という文化があるため、ECサイトにおいてギフトを前面に出すようにカスタマイズすることは良いでしょう。日付、住所などの表示も地域用にカスタマイズすべきです。また、ヨーロッパではサイトの見た目のデザインを重視する傾向もあるようですので、これに応じた調整も考えられます。

■理由2 コストの観点

ユーザ行動観察調査(ユーザビリティテスト)を経たベースのサイトを他の地域に展開することで、全てのサイトを個別に制作するよりコストを抑えることが可能となります。

また、企業情報や製品・サービスページ等で共通のコンテンツがあれば流用が可能であるため、制作・運用コストも抑えられることになります。

■理由3 ブランディングの観点

企業ブランディングの観点においても、最低限統一的な構造・見た目とすることは、企業が伝えたいメッセージを適切に伝えるという点で、ある程度有効に機能します。

図表5:世界のIBMサイト (サイトの基本構造を各国同一としている例)

前編のまとめ

このように、グローバルサイトの制作にあたっては、自社の製品・サービスの特性やターゲットとするユーザを考慮してグローバルサイトの枠組みを決定していく必要があるのです。

次回(後編)では、外国人の特徴を考慮したサイトインターフェースや、グローバルサイトの制作の進め方についてご紹介していきます。

後編はこちら

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執筆者:橋本 公彦
株式会社ビービット ユーザビリティコンサルタント

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