第45回 不況時代に適した費用対効果重視型ウェブサイトリニューアル手法

コストを抑えつつ、成果を最大化させるウェブサイトリニューアル手法をご紹介します。

2009年3月18日

本コラムのサマリ

  • 限られた予算の中で最大の成果を創出する場合におすすめなウェブサイトリニューアル手法として、「シナリオベースリニューアル」がある。
  • 「シナリオベースリニューアル」とは、ウェブサイト内のシナリオ(ユーザ心理と行動導線)に注目し、シナリオ上にある問題点の大きさと改善コストや改善による期待効果の大きさを考慮して、費用対効果が高い部分に特化したリニューアルを行うことを指す。
  • ウェブサイトの画面設計や、ウェブサイト外からの集客施策を検討する上でもシナリオは活用できるため、費用を抑えつつ中途半端ではなく着実に成果にフォーカスしたリニューアルを実施することができる。

費用対効果が高いウェブサイトリニューアル手法の必要性

2008年末からの世界同時不況は国内企業に直接・間接的に大きな影響を与えており、2009年は新規投資の見直し・凍結が相次ぎ企業活動が縮小する年となりそうです。

ウェブサイト運営についても例外なく、広報費用や宣伝費用、IT投資費用の削減という方針の下、2009年度は新規リニューアルや大規模なコンテンツ・システム開発に予算を割きづらい状況が続くでしょう。

しかし、一方でウェブサイトに対する価値創出・売上向上への期待は益々大きくなっており、コストを大きくかけることなく成果を上げる、つまり費用対効果が高いマーケティング活動の舞台として注目されています。

今回は、ウェブサイトのリニューアルに焦点を絞り、限られた予算の中で成果を最大化させるためのウェブサイトリニューアル手法「シナリオベースリニューアル」を紹介します。

一般的なウェブサイトリニューアルの盲点

この手法と一般的なウェブサイトリニューアルとの大きな違いは、リニューアル対象範囲の捉え方にあります。

多くの場合、ウェブサイトリニューアルの対象範囲は「ウェブサイト内の全ページ」です。部分的な場合は、「トップページだけ」「トップページと第一階層だけ」のように階層で区切るほか、「フォームなどシステム構築が発生する箇所以外」など、構築負荷の違いで区切るケースが一般的と考えられます。

一般的なウェブサイトリニューアルの対象範囲

リニューアル対象範囲の決定要素としては、例えば全ページを対象とする場合、デザインやコーディングスタイルの統一性の維持などの運用負荷の観点や、全面リニューアルという活動自体の新規性訴求の観点、予算確保のしやすさなどがあります。

しかし、費用対効果のバランスからリニューアル対象範囲を詳細に検討し、適切に定めているケースはあまり見受けられず、意外と盲点になっている可能性があります。

シナリオに基づくリニューアル範囲の策定

ユーザのシナリオ(ユーザ心理と行動導線)に注目し、費用対効果の観点からリニューアル対象範囲を限定する点が「シナリオベースリニューアル」の特徴です。全面リニューアルが理想的ではあるが予算制約が大きく実施が困難な場合などにおすすめする手法です。

まず、ユーザ行動観察調査やアクセス解析などの定性・定量調査を活用し、現在のウェブサイトがユーザにどう使われているのかを調査します。コンバージョンに至るまでのユーザのウェブサイト利用導線上のどこにボトルネックがあり、改善することでどれくらいの効果が期待できそうか、という仮説を立てます。

単に「アクセス数と離脱率が高いページを上位10ページ」などとページ単位で判断するのではなく、ページ間を遷移するユーザ行動と心理変化を考慮し、流入ページとゴールページを結ぶ線が通る点として個別ページを洗い出すことが重要です。

つまりリニューアル対象範囲の候補は、ゴールに至るまでの一連のユーザ行動導線にある各画面となります。あくまでユーザ心理と行動に立脚すること、これが「シナリオベース」という言葉を用いる理由です。

これに基づき、実際にかけられるコストから、リニューアル対象範囲を最終的に定義します。このとき、必ず「ボリューム」と「伸びしろ(改善余地)」を考慮する必要があります。どんなに現状からの大きな改善が期待できる画面でも、ページで扱う商品にニーズがなく月に5人しかアクセスされないページであれば成果への貢献度は低く、費用対効果が高いリニューアルとは言えません。

「ボリューム」や「伸びしろ」を検討するためには、定量的な数値としてアクセス解析データと成果指標(資料請求数や販売金額)との結びつきを明確にできると理想的です。

シナリオベースリニューアルの考え方

具体的な事例

より具体的に、保険商品を紹介するウェブサイトを架空の事例とし、リニューアル対象範囲策定の手順をご紹介します。

このウェブサイトにおける代表的なユーザ行動として、「トップページから商品一覧ページをたどり、がん保険Aの商品ページへ遷移する。特長をさらっと流し読みした後はシミュレーションを行い、興味があれば資料請求する」という大まかな流れが各調査から発見されました。

これにより、「トップページ」「商品一覧ページ」「がん保険Aの商品トップページ」「商品特長ページ」「シミュレーションページ」をリニューアル対象範囲の候補として洗い出しました。

しかし、この全てのページをリニューアルする費用はかけられなかったため、資料請求というビジネスゴールへの誘導を妨げる最も大きなユーザの行動阻害要因を把握し、費用対効果を検討した上でリニューアル対象範囲をさらに絞り込む作業を行いました。

ユーザ行動とその背景にある心理を深堀した結果、「ユーザは、シミュレーションの結果をもとに具体的な数値で判断したいというニーズを強く持っている。そのため、シミュレーションでは月額料金などの申込条件を微妙に変えて検索を繰り返そうとするが、現在のページでは条件の部分変更ができず一回一回全ての条件を最初から入力する必要があるため、ユーザは面倒と感じ、諦めて離脱してしまっているのではないか」というシナリオ仮説が成り立ちました。

実際に再度確認したユーザ行動観察調査やアクセス解析からも裏づけが取れ、シミュレーションページを改善することがシナリオのゴール達成、つまりコンバージョン向上に大きく貢献することがわかりました。改善に必要なコストと投資可能なコストとを見合わせ、リニューアル範囲を最終的に「トップページの一部」「がん保険Aの商品トップページ」「シミュレーションページ」と設定しました。

メリットとデメリット

このシナリオベースリニューアル手法では、リニューアル対象範囲を定義するにあたりユーザニーズとビジネスゴール(コンバージョン)に向けたシナリオを考慮します。この作業により、実際の画面設計・コンテンツ作成などの後続作業や、ウェブサイト外からの集客施策検討も効果的・効率的に行うことができます。

さらに、一般的な部分リニューアルですと「費用も抑えられるが成果も限定的(もしくは部分的なため成果に直結しない)」になってしまうケースもあります。しかし、本手法は費用を抑えることが目的ではなく、ユーザの行動に注目し、改善による効果が大きく見込まれる部分にフォーカスすることが目的のため、「費用を抑えつつも成果に結びつくリニューアル」を達成できるのです。

一方、あくまでウェブサイトの部分的なリニューアルのため、現在の枠組みによる思考・実装の制約を受けることに注意が必要です。コンテンツの統廃合・新規製作する場合(既存シナリオを大幅に変更する場合)や、ウェブサイトの構造やデザイン・コーディングスタイルの大幅な変更には不向きな手法であることに注意が必要です。

シナリオ検討はウェブサイトリニューアルにおける必須プロセス

今回のコラムでは、ウェブサイトの全面リニューアルが予算制約から実施できない状況での代替策としてシナリオベースリニューアル手法について解説を行いました。

しかしながら、本手法は全面・一部というリニューアル対象範囲に関わらず本来すべてのウェブサイト製作フローにおいて必須のプロセスです。ユーザ中心アプローチはコストをかけたユーザ満足度向上のための取り組みではなく、費用対効果の高い優れたマーケティング手法なのです。

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デジタルマーケティング改善

実績

  • ベネッセコーポレーション

    外部環境の変化に伴い、既存のコミュニケーションでは新規会員獲得が難しくなっていた。これまでとは違うユーザのニーズを捉えたコミュニケーション方針を策定し、ウェブサイト経由の申し込み数108%を達成。

  • 旭化成ホームプロダクツ

    ウェブサイトを製品の魅力を訴求する新たなメディアとして活用するためのリニューアルを実施。豊富なコンテンツ力を活かしターゲットユーザを商品ページへ誘導し、商品詳細ページにて他社商品との違いや独自のブランド力を訴求することに成功。

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