第42回 アクセス解析の罠 - ユーザ行動観察調査の併用による解決 -

「アクセス解析の罠」から抜け出すための効果的なサイト改善手法をご紹介します。

2008年11月28日

本コラムのサマリ

  • アクセス解析はユーザの行動パターンを明らかにすることができる有効な手法であるが、それだけではサイト改善は望めない。
  • 効果的なサイト改善のためにはアクセスデータには表れない行動理由(ユーザ心理や背景)を把握し、精度の高い改善仮説を持つことが重要である。
  • ユーザ行動観察調査はユーザの心理や背景理解を助ける手法であり、アクセス解析と併用することでROIの高いサイト改善が可能になる。

アクセス解析の罠 「アクセス解析だけでサイト改善はできない」

近年、アクセス解析はツールの進化とともに、ますます多くの企業で実施されるようになっています。インプレスR&Dの「インターネット利用動向調査報告書〈ウェブ担当者編〉2007」によると、2007年時点で、約48%の企業でアクセス解析が実施されています。今やアクセス解析はサイト改善のために欠かせない手法の一つとなっているのです。

しかしコンサルティングの現場で実際に企業のサイト運営の様子に接すると、アクセス解析を有効活用できている企業は意外に少ないと感じられます。「データは常に見ているけど、どうやって改善していいかわからない。」これがよく聞かれるウェブマスターの悩みです。

このようなウェブマスターは「アクセス解析の罠」に陥っています。ツールから得られる様々なデータと格闘している間にデータばかりに注意が奪われて、本来必要な別の情報への注意が薄れてしまうのです。

今回は「アクセス解析の罠」から抜け出すための効果的なサイト改善手法をご紹介します。

アクセス解析だけでサイト改善ができない理由

アクセス解析を活用したサイト改善は、一般的に以下のようなサイクルで進められます。

図表1:アクセス解析を活用した、一般的なサイト改善のサイクル

サイトを改善するにあたって特に重要なのが、「改善仮説立案」のプロセスです。アクセス解析を用いたサイト改善がうまくいかない場合、問題はこの改善仮説の精度にあるケースが多いようです。

例えばあるECサイトでは、カートページ(「購入する」ボタンを押した次のページ)の離脱率が60%と高く、問題箇所であると認識されていました。そして、この数字をきっかけにさまざまな改善仮説が考えられました。

  • 「購入手続きに進む」のボタンをもっと上においた方がいいのではないか
  • 自分が買う商品であることを確認できるように、商品画像も配置した方がいいのではないか
  • 削除ボタンを目立ちすぎない配置に変えた方がいいのではないか

しかし上記の仮説では、結局どの案も効果的な改善にはつながりませんでした。やはり仮説の精度が低かったのです。

原因は "なぜ60%もの離脱しているのか"という「行動理由(ユーザ心理や背景)」が把握できていなかった点にあります。アクセス解析ではユーザが「どのように行動するか(行動パターン)」を把握することはできますが、ユーザが「なぜそのように行動するのか(行動理由)」まではわかりません。結果、「どう改善するべきか」という改善仮説の精度が低くなります。

ROIの高いサイト改善手法 『アクセス解析×ユーザ行動観察調査』

仮説の精度を高めるために、ビービットではユーザ行動観察調査の併用を推奨しています。アクセス解析とユーザ行動観察調査とはその特徴や、検証可能な頻度が異なり、お互いを相互補完する関係にあります。以下、簡単に2つの手法の特徴を整理しました。

図表2:アクセス解析、ユーザ行動観察調査のメリット・デメリット

  アクセス解析
(定量ユーザ行動調査)
ユーザ行動観察調査
(定性ユーザ行動調査)
メリット ●ユーザの行動パターンがわかる
●今すぐ実行できる(毎日でも実施可能)
●データをトラッキングすることにより、長期的な傾向を把握することがしやすい(調査条件が変わると難しくなる)
●ユーザの行動理由(ユーザ心理や背景)がわかるため、調査結果から施策を判断する場合、精度が高い
●調査条件がある程度不ぞろいでも柔軟に対応できる
デメリット ▲ユーザの行動理由(ユーザ心理や背景)がわからないため、調査結果から施策を判 断する場合、精度が低い
▲データが不完全だと分析ができない
▲サンプルが少ないことが多く、発見された結果は量的には証明されていない
▲高頻度に実施した場合、費用対効果が悪い(半年から1年に1回程度が理想)
▲長期的な傾向を把握することには向かない

先ほど触れたECサイトのケースでもユーザ行動観察調査を併用することでユーザの行動理由(ユーザの心理や背景)を明らかにし、効果的な改善をすることができました。調査の結果まだ商品を買うつもりのないユーザが「購入する」ボタンを頻繁にクリックしていたことがわかったのです。これが高離脱率の原因でした。ユーザは目的の商品をそのサイトで買うべきかどうか判断するために、商品情報ページで送料や納期を調べようとしていました。しかしうまく見つけることができず、「カートに書いてあるだろう」という期待からカートページを見ていたのです。

結局このECサイトではカートページではなく、商品情報ページを改善することでカートページの離脱率が改善し、売上向上につながりました。これはアクセス解析だけで見つけるのはなかなか難しい改善方法です。

アクセス解析とユーザ行動観察調査の併用によるサイト改善の流れ

アクセス解析とユーザ行動観察調査を併用してサイト改善を行なう場合、以下のような流れで実施すると良いでしょう。

図表3:アクセス解析とユーザ行動観察調査を併用した場合のサイト改善サイクル

アクセス解析は理想的には日次、最低でも月次で、ユーザ行動観察調査は四半期に1回程度のペースで行なうと費用対効果が高くなります。アクセス解析に表れるユーザの行動パターンは自社・他社の活動(キャンペーンなど)や、季節要因、社会情勢などで随時変化します。簡単なデータ取得であればコストがほとんどかからないためアクセス解析は一定の頻度で行なうと良いでしょう。一方、ユーザの心理や背景は短期間で大きく変ることはないため、ユーザ行動観察調査は四半期に1回程度が適切と言えます。

アクセス解析で行動パターンを見ながら改善効果を検証し、定期的にユーザ行動観察調査を行なうことでユーザの行動理由(ユーザの心理や背景)を把握する。このように2つの手法を相互補完的に利用することがROIの高いサイト改善につながるのです。

執筆者:中村 佳史
株式会社ビービット マネージャ

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    日本最大級の求人サイト「フロム・エーナビ」において、アルバイトを探すユーザの実態をオンラインのみならずオフラインの行動も併せて調査。

  • 三井不動産レジデンシャル

    新築物件サイトの反響数向上に向けた改善方針を策定。物件検討ユーザのサイト内外の行動を精緻に把握し、サイト内のコミュニケーションを改善した。

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