第34回 ウェブサイト成功の条件とユーザビリティ

顧客が求めるものを理解し、具現化する力がビジネスの成否を決めます。

2006年7月26日

インターネットの重要性が高まるにつれ、ウェブサイトを単なる自社の告知媒体ではなく、見込み客の顧客化や顧客との関係構築をもたらす経営の重要チャネルとして位置づける企業が増えています。例えるなら、ウェブサイトは「パンフレット」ではなく、「営業マン」や「支店」あるいは「本社」と同等の機能であると考えられるようになってきているのです。

このような変化に伴い、既存のサイトをリニューアルして、ウェブサイトでビジネス成果を追求する動きが高まっています。その際に威力を発揮するのが、「ユーザビリティ」という概念であり、「ユーザ中心設計手法」という方法論です。

ユーザビリティの一般的な解釈

「ユーザビリティ」という言葉は「使いやすさ」と訳され、「ユーザビリティの向上」は「使いやすさの向上」であると解釈されますが、日本語で「使いやすい」と言った場合にイメージできるのは、「ナビゲーションの形はこうあるべき」や「リンクの色はこうだ」といった画面上の個別具体的な事象ばかりです。

しかし、このようなサイト画面上の使い勝手に関する表面的な議論は、「ユーザビリティ」という言葉が持つ意味の極一部を表しているに過ぎません。

ユーザビリティの本来的意義

本来、「ユーザビリティ」とはより根本的かつ本質的な意義を持っています。この言葉には色々な定義がありますが、ISO9241-11の定義が最もその概念を言い表しています。

ISO9241-11における「ユーザビリティ」の定義

ある製品(ウェブサイト)が、

  • 特定の利用状況において
  • 特定のユーザによって
  • 特定の目的を達成するために

用いられる際の有効さ、効率性、満足度の度合い

この定義で重要なのは「特定の」という言葉が3回使われている点です。これは、同じ製品でも、状況やユーザや目的が変われば、そこでの有効さ、効率性、満足度は変わってしまうことを意味しています。

例えば、ある製品=道路として考えてみます。「子供」というユーザが「5人で昼間に」という状況で「かけっこをする」という目的で道路が用いられる場合と、「トラックの運転手」というユーザが「トラックに荷物を満載にして」という状況で「いち早く荷物を運搬する」という目的で道路が用いられる場合では、同じ道路でもあるべき姿は大きく異なることは容易に想像がつくでしょう。

これはウェブサイトであっても同じです。つまり、ユーザやそのユーザの状況、目的によってあるべきサイトの姿は全く異なるのです。ですので「ナビゲーションはこうすべき」といった表面的な議論は意味をなしません。表面を議論したいのであれば、まずはその根の部分=それを使う人、状況、目的を明らかにしないといけないというのがユーザビリティの基本スタンスなのです。

つまり、サイトのあるべき姿を導出するためには、ユーザは誰で、どういう状況で、何の目的でそのサイトを使うのかを明らかにする必要があります。だからこそ、ユーザビリティを高めるためには、ユーザ調査を徹底的に行うのです。

このようにして事前にユーザについて知ることで、ユーザビリティの高い、つまり本当の意味でユーザの目的を満たし、有用で効率的で満足できるサイトを形作る前提が整います。

ウェブビジネスの成功要件

あらゆる商品やサービスに満ち溢れた現代、消費者のニーズは多様化・細分化してきています。例えば、車がなかった時代には、どんな形の車であっても売れたでしょうが、今は個々人のニーズを反映したものでないと売れません。量ではなく質が問われるようになっているのです。

またインターネットによる情報流通革命は、旧来のメディア価値の低下と消費者パワーの増大をもたらし、消費者は企業の広告よりもmixiやブログなど他者の口コミ情報を信頼し、これをベースに意思決定を行うようになっています。

これにより突飛なクリエイティブ勝負の広告など、中身の伴わない一方的な企業の広告や販売促進活動は、意味をなさなくなってきています。広告や販売促進活動よりも、顧客のニーズを満たすサービスや製品そのものの品質がより重要になっているのです。

このような市場変化により、企業は生き残りを掛けて、今まで過剰なまでに支出してきた広告費・販売促進費を、本質的な価値の創出、本質的な顧客経験の醸成に使うようになってきています。

つまり量より質が求められ、生産性よりマーケティング力が競争力となる現在、顧客が求めるものを理解し、具現化する力がビジネスの成否を決める重要な要素になるのです。

もちろんこれはウェブサイトにも当てはまります。むしろ、ユーザを直接見ることができないウェブサイトにおいては、事前にユーザについて把握することの重要性はさらに増します。

そのため、ウェブサイトをビジネスツールに変革するためには、ユーザの目的(ニーズ)を満たした状態=企業にとっての利益となる構図を形作らなければいけないのです。

ユーザビリティ向上=サイトのビジネスツールへの変革

ユーザビリティの根本的な思想とビジネス成否の土台はどちらも「ユーザニーズを満たす」という点において一致していることがお分かり頂けたかと思います。

あとは、徹底したユーザ調査によって明らかとなったユーザニーズと企業の強みや提供価値をウェブサイト上で結びつける作業を行うのです。これはサイトで提供するサービス・商品の見せ方を変えるだけで済むこともありますし、根本的に提供するサービス・商品内容をウェブユーザに合わせて修正することもあります。

このように、ユーザの視点を前提としてユーザと企業の利害関係を調整し、ウェブ上でのユーザとのコミュニケーションを設計して、さらにその思想を確実に画面に反映することで、ウェブサイトは「パンフレット」を脱却して、「ビジネスツール」へと生まれ変わります。もちろん、リニューアル後にはサイト経由の売上げの向上、見込み顧客の獲得数向上など、目に見える変化が現れます。

この一連の作業を方法論として定義したのものが「ユーザ中心設計手法」であり、これらを包括する概念が「ユーザビリティ」なのです。ユーザビリティは表面的なサイトの作りを指し示すものではなく、「誰のための何のサイトなのか」というより根本的な問いを投げかけるものなのです。

サイトの有無ではなく、サイトそのものの価値が問われる時代、そしてインターネットの登場によって情報流通革命が起こり消費者のパワーが強大化する時代において、「ユーザビリティ」という概念は今後インターネット社会を牽引する極めて重要な価値観となるでしょう。

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デジタルマーケティング改善

実績

  • ベネッセコーポレーション

    外部環境の変化に伴い、既存のコミュニケーションでは新規会員獲得が難しくなっていた。これまでとは違うユーザのニーズを捉えたコミュニケーション方針を策定し、ウェブサイト経由の申し込み数108%を達成。

  • 旭化成ホームプロダクツ

    ウェブサイトを製品の魅力を訴求する新たなメディアとして活用するためのリニューアルを実施。豊富なコンテンツ力を活かしターゲットユーザを商品ページへ誘導し、商品詳細ページにて他社商品との違いや独自のブランド力を訴求することに成功。

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